【8月23日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前米大統領の下で初代国土安全保障省長官を務めたトム・リッジ(Tom Ridge)氏が、2004年11月の米大統領選前にブッシュ政権高官らから、テロ警戒レベルを引き上げるよう圧力を受けたと、出版予定の著書で明らかにした。

 リッジ氏が圧力をかけられたと語る相手は、当時のドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)国防長官とジョン・アシュクロフト(John Ashcroft)司法長官。警戒度ごとに色分けして示される警戒レベルを上げるよう指示されたが、リッジ氏は拒否したという。

 近刊予定の著書でリッジ氏は「この一件の後、わたしは連邦政府の職を離れて民間へ移るという計画を実行せざるをえなくなった」と記しているという。

 ブッシュ政権下で批判勢力は、国民に広く受け入れられていた「テロとの戦い」に議論の的をずらし、国民に不評なイラク戦争による政治的ダメージを鈍らせるために、政府がテロ攻撃に対する警戒を利用しているのではないかと、繰り返し疑問を呈していた。

 しかし、ブッシュ政権で国土安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたフラン・タウンゼント(Fran Townsend)氏は「わたしがホワイトハウスにいた4年半の間に、テロ警戒レベルに関する議論のなかで政治が論じられたことは一度もない」と、リッジ氏のエピソードを否定している。

 リッジ氏はタウンゼント氏についても、2004年8月1日の演説の前に同氏から国土安全保障省に電話があり、「米国土から離れた場所における国防手段」を演説で言及するよう、リッジ氏に要請があったとしている。リッジ氏は、その言葉がイラク戦争を指していると考えたという。

 この演説でリッジ氏は、ニューヨーク市(New York City)の金融街とニュージャージー(New Jersey)州、ワシントンD.C.(Washington D.C.)の警戒レベルを引き上げたと述べ、イスラム原理主義勢力に対抗するブッシュ大統領の指導力をほめたたえた、と明かしている。
  
 またリッジ氏は、米連邦捜査局(FBI)が情報を自分に伝えないために、日課であるブッシュ大統領への定期報告が「不意打ち」で行われたことが多々あったことや、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)に出席するよう一度も招かれたことがなかったとも記している。

 リッジ氏はペンシルベニア(Pennsylvania)州知事を経て、2001年9月11日の米同時多発テロを受けて米議会が発足させた国土安全保障省の初代長官に就任した。

 米出版社トーマス・ダン・ブック(Thomas Dunne Book)から発売されるリッジ氏の著書『The Test of Our Times: America Under Siege ... And How We Can Be Safe Again(われらの時代の試練:包囲された米国は、いかに安全を取り戻せるか)』は、9月1日に米国内で発売開始される。(c)AFP/Olivier Knox