【7月2日 AFP】アフガニスタンでは8月に大統領選挙が行われるが、有権者が戦争の深手を負った自国に対し民主主義への希望を失うなか、人権侵害行為で非難を集めたかつての軍閥が政界の中枢部に復帰しつつあると、人権団体などが指摘している。

 ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領は2001年、米軍による攻撃開始直後に就任した当初は、ソ連のアフガニスタン侵攻やイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)との戦闘で勇名をはせた軍閥たちとは距離を置いていた。しかし今回、タリバン政権崩壊後2度目の大統領選に出馬するにあたり、カルザイ氏は軍閥の司令官らに要職への復帰を約束して支持をとりつけ、勝利をほぼ確実にしつつある。支持を表明した軍閥には、北部同盟(Northern Alliance)のラシド・ドスタム(Abdul Rashid Dostum)将軍などが含まれている。

 アフガニスタンの人権団体「アフガニスタン・ライツ・モニター(Afghanistan Rights Monitor)」は今週、「軍閥や民兵の司令官や人権迫害者らが、金や権力、影響力に物を言わせて自分たちの将来的な利益を確保しようと、大統領選のプロセスをハイジャックしつつある」と警鐘を鳴らした。 

 同団体によると、アブドラ・アブドラ(Abdullah Abdullah)元外相らほかの候補者たちもカルザイ大統領にならい、軍閥の支持をとりつけることに躍起になっているという。

 ほかにも内閣や議会、各州の要職には、民兵の元司令官らがすでに少なからず存在している。

■政府への幻滅でタリバン台頭

 軍閥は1989年のソ連軍の撤退に大きく貢献したが、その後軍閥同士の対立から内戦に発展し、4年間に首都カブール(Kabul)だけで5~8万人の犠牲者が出た。 

 96年にタリバンが政権を掌握すると、宗教的信条によって無法状態を収めてくれるだろうとの期待から、人々はタリバンを歓迎した。しかし、タリバンは5年間にわたり圧政を敷き、01年に米軍によって政権から追放されると、アフガニスタンはゼロからの再建を余儀なくされた。

 アフガニスタン専門家で国際治安支援部隊(International Security Assistance ForceISAF)のアドバイザーでもあるサラ・チェイエス(Sarah Chayes)氏によると、アフガニスタン国民はこのとき、有能かつ責任感をもって国民1人1人に奉仕する政府の樹立に国際社会が手を貸してくれるものと期待したが、それは見事に裏切られた。というのも、外国の支援部隊はタリバンと国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との関係を断つことだけに専念しているからだ。

 その結果、政府の腐敗とも相まって、政権に不満をもつ国民の一部はタリバン寄りになってきているという。

 アナリストのワヒード・ムジャ(Waheed Mujda)氏は、「アフガニスタンは多民族国家で、イデオロギーに基づいた強力で全国的な政党がないこともあり、軍閥につけ入るすきを与えている。こうした軍閥は通常ならば犯罪者扱いされるが、指導者を選ぶ選挙になると突如として、英雄に様変わりする」と指摘している。(c)AFP/Sardar Ahmad