【3月17日 AFP】(一部更新)ブッシュ前政権時代に、米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)がテロ容疑者を「拷問」していたとする赤十字国際委員会(International Committee of the Red CrossICRC)の非公開報告書の内容が16日、人権保護団体によって明かにされた。米連邦議会の民主党議員などから、真相調査委員会の設置を求める声が上がっており、オバマ新政権は尋問に関与したCIA関係者の刑事訴追など、なんらかの対応を迫られている。

 赤十字の非公開報告書は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領の在任中に作成されたもので、国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」のメンバーとして拘束された14人にCIAが行った過酷な尋問の実態を詳細に記載している。

 報告内容は拘束者からの聞き取り調査に基づくもので、「頭を壁に打ちつける、数日間にわたり睡眠や固形食をとらせないなどの行為は拷問に相当する」と結論づけている。また、殴打、極端な温度環境での拘束、水責めなどによる尋問を「残酷、非人道的、または人間性否定の取り扱い」と厳しく非難している。

 ICRC関係者らは報告書が本物であることを認めたが、ジュネーブ(Geneva)のICRC報道官は、報告書は一般公開を意図した物ではなく公になったことは遺憾だと述べた。CIAはコメントを拒否した。

 問題の報告書は2007年に少なくとも5冊が、ICRCからCIAや当時の米政権幹部に配布された。この際、政治的中立性を確保するためのICRCのガイドラインによって外部に公開しないことという条件が付けられていた。

 人権保護団体の間では、「テロ容疑者」の扱いを見直すとしているバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領政権の関係者が、意図的に報告書内容を漏らしたとの見方も出ている。

 戦略国際研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のサラ・メンデルソン(Sarah Mendelson)氏は、米国は国連(UN)の拷問等禁止条約の批准国であり、拷問関与が疑われる前政権関係者を調査する義務があると話す。

 民主党議員からも、ブッシュ政権やCIAが「テロとの戦い」との名目で行ってきた尋問や令状無しの盗聴などの実態を明らかにする真相調査委員会の設置を求める動きが出ている。
 
オバマ大統領(Barack Obama)は当面、事態静観の姿勢をとっているが、「何人も法の上に立つことはできない」と述べ、刑事訴追の可能性を否定していない。(c)AFP/Dan De Luce