【1月9日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)次期米大統領の政権移行チームは8日、来月に迫ったデジタルテレビへの完全移行の延期を要請する書簡を米上下両院の有力議員に送付した。

 AFPが入手したこの書簡のコピーによると、政権移行チームのジョン・ポデスタ(John Podesta)共同議長は法律で定められた2月17日のアナログ放送の終了期限を延長するよう求めた。オバマ氏は1月20日、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領から政権を引き継ぐ。

 ブッシュ政権の計画では、2月17日にテレビ各局はアナログ放送を終了しデジタル放送のみに切り替える。地上波テレビ放送を受信している消費者は、それまでに地上デジタル放送用のチューナーを購入する必要がある。

 チューナー購入費用の補助のため消費者に40ドル(約3600円)のクーポン券を支給することが決まっていたが、ポデスタ氏はこの計画の資金が底を着いたと述べた。2月上旬にはクーポン券の不足分は500万件以上に上る見通しで、その後も不足分は「毎日数十万件ずつ増加していく」という。

 さらに、ポデスタ氏は、地デジ移行の支援基金が「非常に不足している」と述べ、特に地方在住で所得が低い高齢者が影響を受けると指摘した。

 ポデスタ氏は書簡で、「クーポン券を配給できず、支援や情報提供も不十分なことから最も弱い立場にいる国民が影響を受けつつある。法律で定められたアナログ放送の終了日の変更を検討するよう強く要請する」と述べた。

 米議会は商務省の電気通信情報庁(National Telecommunications and Information AdministrationNTIA)にクーポン券配布費用として13億4000万ドル(約1200億円)の予算を与えたと報じられている。

 デジタルテレビへの移行によって空いた電波帯域を治安機関や高度なモバイルサービスに割り当てることが可能になる。米ワシントン・ポスト(Washington Post)紙によると、同帯域の競売で政府は08年に190億ドル(約1兆7000億円)を得た。

■延期に放送局は支持、家電業界は反対

 米主要放送局は移行延期を支持する姿勢を示した。米メディア大手ニューズ・コーポレーション(News Corporation)は8日に声明を発表し、「われわれの最優先の関心事は視聴者にとって何が最善かということだ。オバマ氏の政権移行チームはわれわれの懸念を共有している」と述べた。

 一方、業界団体の米家電協会(Consumer Electronics AssociationCEA)は、2月17日の期限を変更しないよう提案した。CEAは、十分な数のチューナーが供給されており、また、消費者も地デジへの移行をよく知り、準備をしていると述べた。しかし、クーポン券問題については、直ちに対策をとるべきだとした。

 CEAのゲイリー・シャピロ(Gary Shapiro)会長は、「消費者の混乱を避けることが目的なのだとしたら、消費者への周知が十分になされている2月17日の移行日を変えないことが最善の選択だ」と述べた。(c)AFP