【11月11日 AFP】北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記(66)の健康悪化が伝えられるなか、観測筋の間では、ナンバー2とされる義弟の張成沢(チャン・ソンテク、Jang Song-Taek)氏(62)が、総書記をしのぎ実質的な最高指導者としての権限を把握しつつあるとの憶測が流れている。

 金総書記が脳卒中に倒れた可能性が報じられて以降、張氏の影響力は日に日に増していると、韓国の民間シンクタンク世宗研究所(Sejong Institute)の南北関係専門家、張成昌(Cheong Seong-Chang)氏はみている。「金総書記からの命令を受け、それを(各省庁に)伝達する役を果たしているのは明らかに張成沢氏だ」

 韓国高官のなかには、張成沢氏の影響力はもっと大きく、日々の国政で代役を務めるほどになっているとの見方もある。

 10日に匿名でラジオ出演した韓国の情報部高官は、張成沢氏が現在、秘密警察を含む治安当局と警察の全権を握っていると述べ「だからこそ実権を持つという意味では、張成沢氏が北朝鮮の実質的なナンバー2だとみんなが言っている。病床の金総書記にとって最も信頼の置ける人物が、自分の妹の夫である張氏だ」と分析した。

 この高官によると、張成沢氏は一党独裁を行う朝鮮労働党と軍の双方に広い人脈を持っており、これが張氏が総書記代行を演じているという韓国情報機関の推測の根拠となっている。「事実上北朝鮮を支配しているのが、軍部でなく張成沢氏であれば、われわれにとってはかなり幸運なことだ」

 ただし、張成沢氏が力を増していることが、必ずしも総書記の後継となることはつながらないとする専門家の声もある。前述の世宗研究所の張研究員は、張成沢氏が総書記代行を務めているという見方をまず否定し、さらに最高指導者としての権限は、金総書記の健康状態やその時々の状況で、そう簡単に移譲されるものではないと明言する。

 丁世鉉(チョン・セヒョン、Chung Se-Hyun)前統一相は11日「張氏が北朝鮮を支配しているというより、張氏を通じて金総書記が支配していると言ったほうがよいだろう」と述べた。(c)AFP/Park Chan-Kyong