【11月12日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は10日、前週の大統領選で共和党の同志を破ったばかりのバラク・オバマ(Barack Obama)次期大統領をホワイトハウス(White House)でにこやかに歓迎した。だが、握手を交わす次期大統領と去りゆく大統領の笑顔の裏では、政策をめぐる水面下の攻防がすでに始まっている。

 ブッシュ政権は、8年ぶりとなる共和党から民主党への政権移行を円滑に行うために全面協力するとオバマ氏に約束。発足したばかりのオバマ氏の政権移行チームは、ブッシュ政権から国家機密情報の説明を受けることとなっている。

 だが、ブッシュ大統領は、他党に政権を引き渡す現政権側が影響力を死守する「慣例」までも止めると約束したわけではない。

 過去の大統領たちもホワイトハウスを去る間際まで、あの手この手を駆使して、新政権下での自身が成立させた政策の生き残り策を図ってきた。

 特に、新大統領や議会決定によって否決されない限り、法的拘束力を持つ「大統領令」は、去りゆく大統領にとって伝家の宝刀ともいえる。

 米議会調査局(Congressional Research Service)によると、過去にも、大統領が政権を引き渡す直前の「死に体」期間中に「大統領令」を発令する例が多いという。

 しかし、「大統領令」は新大統領にとっても強力な武器となる。新たな政策の導入に燃やす次期大統領は、前政権下で成立した政策の見直しや廃止に意欲的な場合が多いからだ。

 オバマ次期大統領が任命したジョン・ポデスタ(John Podesta)政権移行チーム共同議長は9日、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究やエネルギー政策に関するものなどブッシュ大統領が発令した大統領令全般を見直すと宣言している。

 また、ブッシュ大統領自身も、2001年の大統領就任時には、ビル・クリントン(Bill Clinton)政権が駆け込みで成立させた法案を、数多く保留処分または廃棄している。 

 一方、ブッシュ政権もオバマ政権が実施するであろう「変革」への抵抗準備も進めている。

 ジョシュア・ボルテン(Josh Bolten)大統領首席補佐官は、各政府機関に対し、1日までに既存法案の成立をめざすよう指示しているが、これは、これらの法案が、オバマ政権誕生後の議会で廃棄されることを阻止する意図がある。

 ワシントン・ポスト(Washington Post)紙によると、ブッシュ政権下で今年度に成立した法案は90に上る。その多くはエネルギー、農業などの産業を優遇していることから、オバマ氏の大統領就任後の法案撤廃は難しいと予測する。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は前週の社説で、ブッシュ政権下で成立した法案は、市民権利の低下や環境保護に反するものだと懸念を表明している。(c)AFP