【9月30日 AFP】イスラエルのエフド・オルメルト(Ehud Olmert)首相は、29日に同国イディオト・アハロノト(Yediot Aharonot)紙上に掲載されたインタビューの中で、イスラエルはパレスチナとの和平の代価として、東エルサレム(Jerusalem)を含むヨルダン川西岸(West Bank)のほぼ全域を手放す必要があると語った。

 オルメルト首相は「イスラエルの歴代指導者で、このような発言を行ったのはわたし以外にいない」と述べたが、同首相は既に退陣することが決まっており、影響力も限定されることから、イスラエル国内では政治的な遺言と受け止められている。

 オルメルト首相は「われわれはパレスチナとの(和平)協定を成立させなければならない。つまりそれは、実際問題として、すべてではないにしても、(ヨルダン川西岸の)ほぼ全域から撤退するということだ」と語った。

 オルメルト首相は「われわれはこれらの土地のある割合は維持できるだろうが、それと同じ割合の土地をパレスチナに渡さなければならない。それなしでは和平はありえない」とした上で、アラブ人の多く住む東エルサレムに言及し「それにはエルサレムも含む」と語った。東エルサレムは、1967年の第3次中東戦争時にイスラエルが占領・併合したもので、パレスチナ自治政府は将来のパレスチナ国家の首都として位置づけている。

 イスラエルは公式にはエルサレムを「不可分の永遠の首都」としているため、オルメルト首相が東エルサレムに言及したことは、激しい議論を巻き起こす可能性がある。

 オルメルト首相は、東エルサレム出身のパレスチナ人がブルドーザーを暴走させ死者がでた7月の事件を挙げて、エルサレムの一部を手放すことはイスラエルの治安上、重要なことだとの認識を示した。

 さらに、「エルサレム市全域を手放さないのならば、イスラエルの主権内に27万人のアラブ人を抱えなければならない。うまくいくはずがない」とした上で、「決断が必要だ。この決断は、われわれの生来の本能、心の奥にある願い、集団としての記憶、2000年にわたるユダヤ人の祈りに反することになるだろう」と強調した。(c)AFP/Patrick Moser