【9月18日 AFP】中南米地域はかつて「米国の裏庭」として、超大国の隣人に配下のように扱われてきた。だが前週、ボリビアとベネズエラが米国大使の国外退去を決めると、続いてホンジュラスも新米国大使の着任を拒否するなど、同地域の左派政権は一斉に外交的一撃を加えて米政府を揺るがしている。

 しかし、これらの国々の反米感情は今に始まったことではない。その根っこは冷戦時代に代理戦争の場とされ、次々に左派政権が誕生し、豊かさと近代化を目指したころにさかのぼる。

 米国はいまだに、1823年に発表したモンロー主義(Monroe Doctrine)に固執している。米国は過去にこれを大義名分として、中南米地域に干渉し、後に旧ソ連の影響力阻止の動きを正当化するためにも利用した。

 一方、中南米諸国は、内政問題に対する完全な主権行使を決意している。

 ボリビアのエボ・モラレス(Evo Morales)大統領は、米国大使の国外退去を「米国の帝国主義」に対する抗議だと主張。2006年に同国初の先住民大統領となったモラレス大統領は、今回の措置をボリビアだけでなく、約500年にわたりその時代の帝国主義者と闘ってきた中南米全体の先住民の闘争に同調したものだと述べた。

 ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領は、1999年の大統領就任以来、反米主義を掲げており、モラレス大統領とは盟友だ。

 両者に共通する考え方は緩やかな社会主義の導入だが、これはキューバ革命を率いたフィデル・カストロ(Fidel Castro)前キューバ国家評議会議長や、アルゼンチン生まれのキューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ ゲバラ(Ernesto Che Guevara)によって具現化されたマルクス主義に起因する。

 エクアドルのラファエル・コレア(Rafael Correa)大統領もチャベス大統領を友人と呼び、政権運営においてベネズエラと同様の方針を進めており、米国に本部を置く国際通貨基金(International Monetary FundIMF)に対しても敵意を示している。

 ホンジュラスのホセ・マヌエル・セラヤ(Jose Manuel Zelaya)大統領がボリビアやベネズエラに同調したのは、米国がメキシコ以南に拡大しようとしている米州自由貿易地域(Free Trade Area for the AmericasFTAA)に対抗するための代替構想として推進された「米州ボリーバル代替統合構想(Bolivarian Alternative for the AmericasALBA)」で、チャベス大統領との同盟関係を強化していることが背景にある。ALBAには、ニカラグアやキューバも加盟している。

 中南米では現在、貧困と貧富の差が拡大しており、それが左派政権誕生の土壌となっている。アルゼンチン、ブラジル、チリが中道左派、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグア、エクアドルが強硬な左派政権となっている。一方、中南米での米国の主な同盟国はコロンビアとメキシコで、コスタリカとの関係も良好だ。(c)AFP