【8月27日 AFP】仏教の僧侶ら数万人が27日、韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)政権がキリスト教を優遇しているとして、ソウル(Seoul)中心部をデモ行進した。

 法衣を着た僧侶ら5万5000人(警察推計)が市庁舎前広場に集まり、大きな太鼓の音を合図に異例のデモ行進を開始した。デモ主催者によると、全国の仏教寺院でも鐘を同時に鳴らしたという。

 李大統領は、プロテスタント系の長老派教会(Presbyterian Church)の幹部信者。李氏が2月に政権の座についてから、仏教徒は、キリスト教を優遇しているとして懸念を示してきた。

 大韓仏教曹渓宗(Jogye Order)は、ウェブサイトで、政府要職にプロテスタント系のキリスト教徒を起用するなど、キリスト教を優遇している疑いのある23件の事例を公開した。

 仏教徒の怒りに火を付けたのは、政府省庁が発行したソウル市内の地図にキリスト教の教会は記されているものの、仏教寺院は記されていなかったことだった。

 そして、7月には米国産牛肉の輸入再開への抗議で指名手配されていた活動家7人が逃げ込んでいたソウル市内の曹溪寺(Jogyesa)で、警察が曹渓宗の高僧の車を寺院の外で止めてトランクなどを調べるなどしたため信徒が反発していた。

 その後、警察庁長官が謝罪し、警察幹部2人を懲戒処分としたものの、仏教徒は、仏教指導者を犯罪者として扱ったとして警察を非難。長官の辞任を要求していた。

 政府は仏教徒の怒りを鎮めようと、26日には柳仁村(ユ・インチョン、Yoo In-Chon)文化観光相が遺憾の意を表明した。柳氏は、政府関係者による宗教差別を禁止する規則を新設すると発表。李大統領も公務員に対して、信仰について論争的な発言をしないように求めていた。

 しかし、これに対し、仏教界側は、要求が満たされないのであれば、全国でさらに多くの抗議行動を行うとしていた。韓国の公式資料によると、韓国には1000万人の仏教徒と1370万人のキリスト教徒がいる。(c)AFP