【8月6日 AFP】イラクの故サダム・フセイン(Saddam Hussein )前大統領と、2001年9月11日に起きた米国同時多発テロのつながりを示すといわれる書簡のねつ造を、ホワイトハウス(米大統領府)が中央情報局(CIA)に命じていたとの疑惑を、米国人ジャーナリストが新刊書で取り上げ、ホワイトハウスが全面的な反撃に出ている。

 問題の本は米国人ジャーナリスト、ロン・サスカインド(Ron Suskind)氏の新刊書『The Way of the World(ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド)』。ホワイトハウスと並びCIA、およびこの本の中でホワイトハウスの命令を上級工作員に伝えたとされるジョージ・テネット(George Tenet)元CIA長官が一斉に反発している。

■イラク情報機関の元長官を工作に利用か

 テネット元長官は「わたしが知る限り、このような命令がホワイトハウスからわたしに届いたことはないし、CIAの誰もこうしたことに関与したことはない」と声明を発表した。

 しかし、米公共ラジオ(National Public RadioNPR)のインタビューに出演したサスカインド氏は、この話は「その作戦のまっただ中で」CIAの中近東ディビジョンの責任者だったロブ・リチャード(Rob Richard)氏らの説明を根拠にしていると語った。「彼の記憶するところでは、リチャード氏はテネット氏から『海兵隊員よ、命令だ』(リチャード氏は元米軍海兵隊員)と計画を明かされたという」

 サスカインド氏によると、2003年の米軍によるイラク侵攻後、当時CIAに保護拘置されていたイラク情報機関の元長官タヒル・ジャリル・ハブシュ(Tarir Jallil Habbush)氏の筆で書き直させたいとする書簡の内容が、ホワイトハウスからテネット氏に渡されたという。

 この書簡は2001年7月の日付で、9.11同時多発テロの主犯格とされるモハメド・アタ(Mohammed Atta)容疑者を、イラク政府が招いていたとハブシュ氏に書かせるものだった。中ではアタ容疑者について「並外れた努力と固い決意をもって、攻撃の実行チームを率いた。われわれもその標的が破壊されるべきだと同意した」と書かれていると、サスカインド氏は新刊で指摘している。

 サスカインド氏は次のように書いている。「ハブシュ氏に手紙を渡し、彼にイラク政府の印章の入った便せんを使って手書きで書き換えさせ、本物らしく見せようという策だった。そうして作り上げた書簡をCIAがバグダッド(Baghdad)へ持ち込み、誰かを通じてメディアへ流出させようとしていた」

■「CIAは政権に抵抗」

 この書簡の存在は2003年12月、英国で発覚した。

 サスカインド氏は、書簡ねつ造を命じた人物が誰だったか具体的には言及しなかったが、ホワイトハウスの「最高部に近い人物」とほのめかした。

 CIAのマーク・マンスフィールド(Mark Mansfield)報道官は、CIAが書簡をねつ造したという疑いを否定し、サスカインド氏の新刊こそ「フィクション(作り話)のコーナー」に値すると痛烈に批判した。

 テネット元CIA長官も「よくできた話だが、証拠もなくイラクとアルカイダをつなげる図式を描こうとした政権内の一部に対し、CIAはわたしの指揮下で抵抗した」と反論。「そうしたスタンスをわたしが突然ひるがえし、偽証工作を行ったという主張は、われわれの信念にまったく反しているし、ばかげている」

 サスカインド氏の新刊では、イラク開戦前夜、英国の情報要員もヨルダンの首都アンマン(Amman)でハブシュ氏と秘密裏に接触したとされている。その際、ハブシュ氏は英情報員にイラクは大量破壊兵器を保有していないことを伝え、ブッシュ大統領はイラク侵攻前にその情報を知っていたと、サスカインド氏は主張している。

 ハブシュ氏は後にイラク国外へ移住し、500万ドル(約5億4500万円)を受け取ったとされる。(c)AFP