【7月15日 AFP】米大統領選の民主党候補指名が確定しているバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員を、イスラム教徒風に描いた米ニューヨーカー(New Yorker)誌の表紙が波紋を広げている。オバマ陣営は14日、同誌に対し公式に文書で抗議を申し入れた。

 風刺漫画家バリー・ブリット(Barry Blitt)氏による「The Politics of Fear(恐怖の政治)」と題された表紙は、イスラム教徒の装束を身に付けたオバマ氏と、軍服姿でカラシニコフ銃を背負ったミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人がホワイトハウス(White House)の執務室に立っているもので、FOXニュース(Fox News)が「テロリスト風」と評した、拳を付き合わせるスタイルであいさつを交わしている。

 さらに、暖炉では星条旗が燃やされ、壁には国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の肖像画が掲げられている。

 この過激な風刺画を表紙としたことについて、ニューヨーカー誌は、「ゆがめられたオバマ氏に対するイメージを誇張したもの」と説明。「オバマ氏はキリスト教徒だと明言しているが実はイスラム教徒であることを隠している」といった事実無根の論評への皮肉を込めたものだという。

 だが、オバマ陣営の広報担当、ビル・バートン(Bill Burton)氏は、抗議声明の中で、ニューヨーカー誌側の説明に一定の理解を示しながらも、「多くの読者は(この表紙を)不適切で侮辱的だと思うだろう」と不快感を示した。

 大統領選ではオバマ氏のライバルとなる共和党のジョン・マケイン(John McCain)上院議員陣営も、この件ではオバマ陣営を全面的に支持する声明を発表している。

 これに対し、ニューヨーカー誌側も「風刺は隠れた偏見や不条理を公にあぶり出すもので、われわれの使命の一部だ」と、表紙の正当性を主張する。

 物議を醸している表紙の作者、ブリット氏も、当然ながらニューヨーカー誌を支持する。同氏はHuffington Post紙(電子版)に対し、「ある集団はオバマ氏には愛国心が欠如していると主張しているが、まったくばかげている。彼らの主張を『恐怖政治』の風刺画として描き、ばかばかしさを強調するのが狙いだった」と語っている。(c)AFP