【7月11日 AFP】(一部更新)米政府は10日、2日にわたって実施されたイランの一連の弾道ミサイルの発射実験について、イラン政府が主張する発射数について疑問を呈すとともに、同政府に対し挑発的な行動を直ちに一切中止するよう求めた。

■10日の発射数は1発のみか

 米政府高官が匿名でAFPに明らかにしたところによると、イランが10日に発射したミサイルは1発のみで、イランのメディアが報じているような大規模な発射実験ではなかったとみられるという。また、9日の実験についても、発射されたのはイラン側が主張する9発ではなく、7発だったとしている。

 この高官によると、米政府は9日、中距離弾道ミサイル「シャハブ(Shahab)3」1発を含む7発の発射を確認。「10日にも1発が発射されたとみられるが、これは前日に発射に失敗したミサイルが使用可能となり、改めて発射された可能性が高い」という。

■イランの公開画像にデジタル修正疑惑

 イランが9日に行ったミサイル試射については、イラン革命防衛隊(Revolutionary Guards)のウェブサイトで公開された画像が、デジタル処理で修正されたものだった疑惑が持ち上がっている。

 公開された画像には発射される4発のミサイルが映っているが、実際に発射されたのは3発で、4発目は他のミサイルの発射時に発生した煙やほこりを素材に合成されたとみられるという。

 英ロンドン(London)の国際戦略研究所(International Institute for Strategic StudiesIISS)のマーク・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)上級研究員は、今回の実験は示威的なものだと指摘、「ミサイル能力を実際以上に誇張する」ため、発射の失敗を隠ぺいする目的で写真の修整が行われた可能性が高いとの見方を示した。

■米国は平和的解決を強調

 イランの核開発問題をめぐる緊張が高まる中、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は、平和的な問題解決に努力する姿勢を改めて強調した。

 ホワイトハウス(White House)のトニー・フラット(Tony Fratto)報道官は、「外交を最大限に活用し、問題の平和的解決に向けイラン政府を交渉の席に着かせること」が米政府の目標だと述べる一方、「イランのミサイル発射実験、あるいは弾道ミサイル開発は、国連安全保障理事会(UN Security Council)の決議に違反する」と非難し、ウラン濃縮と挑発行為の停止を求めた。

 今回のミサイル発射実験で、イランが核開発の方針を平和利用から核兵器開発に転換したのではないかとの懸念が再浮上しているが、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官は9日、対イラン開戦が近いとの見方を否定。フラット報道官も繰り返して戦争を否定し、十分に対話し「賢明な方法」での解決を望むと述べた。

 ただ、コンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)国務長官は、米政府はイスラエルをはじめ中東地域の同盟国を防衛する準備が整っており、湾岸地域への米軍派遣を増強していると警告している。(c)AFP