【7月8日 AFP】米国防総省は7日、イラクの要請により濃縮ウランの原料となるイエローケーキ(ウラン精鉱)数百トンをイラクからカナダへ秘密裏に輸送する作業に、米軍が過去数週間にわたり協力していたことを明らかにした。

 輸送されたイエローケーキの総量は550トンで、イラクからカナダ企業に売却されたもの。国防総省のブライアン・ホイットマン(Bryan Whitman)報道官によると、首都バグダッド(Baghdad)南方ツワイサ(Tuwaitha)からトラックで市内の米軍管理区域グリーンゾーン(Green Zone)まで移送され、そこから軍用機で第3国に運搬された後、航路でカナダへ向かった。輸送は前週末、完了した。

 このイエローケーキは2003年、イラクに侵攻した米軍がツワイサの原子力研究施設で発見し、その後は国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の管理下に置かれていた。

 イエローケーキは精製ウランの一種で、原子炉用のウラン燃料の製造に使用されるが、濃縮して核兵器に使用することもできる。

 ホイットマン報道官によると、イラク政府は第3国への売却と輸送への協力を米国に求めていたという。売却先はカナダのウラン生産大手「カメコ(Cameco)」で、同社は550トンを数千万ドル(数十億円)で購入した。売却交渉は数か月前に開始されたが、輸送自体は数週間で済んだ。

 米国が負った輸送費は約7000万ドル(約75億円)で、イラク政府が一部返済に基本的に合意しているという。

 また報道官は、米エネルギー省もこの輸送作業に協力したが、主導したのは国防総省だったとしている。イエローケーキの入ったドラム缶の輸送に使われたコンテナは110個に上り、これらを軍用輸送機C-17で37回の空輸によって第3国に運び出し、米海軍艦船に積み込んだという。

 今回の売却によって、確認されている限りでイラク国内に残っているイエローケーキはない、とホイットマン報道官は述べた。

 今回の輸送は前週末、イエローケーキがモントリオール(Montreal)港に到着したことをカメコが認めたことから公になった。カメコによると、2007年に米政府から購入の打診を受けたという。広報担当のLyle Khran氏は6日「世界で最も不安定な地域の一つからウランを除くことができ、また、ウランを電力のために使用する安定した地域に移すことができ、満足している」と述べた。イエローケーキは、トロント(Toront)北部のブラインド・リバー(Blind River)およびポート・ホープ(Port Hope)の原子力発電所で使用される予定だという。(c)AFP