【6月3日 AFP】(一部更新、写真追加)イタリアのローマ(Roma)で3日、「食糧サミット」が開幕し、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は各国の指導者に世界規模での大幅な食糧増産を呼びかけた。

 潘事務総長は、高まる食糧需要を満たすため、農業に対する投資を増やし、市場を歪める貿易政策や課税政策を排除し、2030年までに世界の食糧生産を50%増やす必要があると訴えた。また食糧危機を緩和するためには世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)のできる限り早期の妥結も不可欠だと述べた。

 今回の食糧サミットは世界で数百万人を貧困の危機にさらしている食糧価格高騰に対処するため、国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganizationFAO)が主催した。約50か国の首脳らが出席し、ローマのFAO本部で5日まで開催される。潘事務総長は「国際的な食糧危機の根本原因に取り組み、農業を活性化する歴史的な機会だ」だと述べた。

 現在の食糧価格は過去30年間で最高となっている。潘氏は世界規模での即刻の対応が必要であると同時に、「食糧安全保障を強化する」長期的な目標も欠かせないと訴えている。

 また、演説に立った福田康夫(Yasuo Fukuda)首相は、貧困国の食糧不足緩和のために「日本は近い将来、30万トンの備蓄米を放出する準備がある」と述べ、「緊急対応策となるだけでなく、食糧市場を一定均衡に戻しうる短期策ともなる」として、各国指導者にも余剰食糧の放出を呼びかけた。

 首相は前日、今回の食糧サミットの成果を7月に北海道洞爺湖で開催する主要8か国(G8)首脳会議で生かしたいと発言した。

 ジャック・ディウフ(Jacques Diouf)FAO事務局長は、1996年に同じローマで開かれた「世界食糧サミット(World Food Summit)」で、2015年までに世界の飢餓人口を半減させると設定された目標が達成されなかった点は残念だと述べ、「現在の流れのままでは、その目標が達成されるのは2015年どころか2150年になってしまいそうだ」と嘆いた。

 さらにディウフ氏は、世界で多くの人が飢えに苦しんでいる一方、太りすぎの人々による過剰な消費によって世界で年間200億ドル(約2兆1000億円)が無駄なコストとなっていると述べた。(c)AFP/Gina Doggett