【4月28日 AFP】北京五輪の聖火リレーが世界各地で騒動を引き起こし中国の人権問題に国際社会の厳しい眼差しが注がれる中、北京五輪のスポンサー企業らは息を潜めて成り行きを見守っている。

 数百万ドルを投じてスポンサー権を勝ち取った企業の中で、これまでに辞退を申し出たり、中国政府に異議を申し立てたりした企業は1社もない。

 北京五輪組織委員会(Beijing Organising Committee of the Olympic GamesBOCOG)の広報担当、孫偉徳(Sun Weide)氏は「スポンサー企業との関係は良好」と語る。

「スポーツと異文化の祭典である五輪を抗議の場とすることは恥ずべき行為だという点で、スポンサー企業とわれわれは同じ立場だ」(孫氏)

 13億の人口を持つ巨大な中国市場を前に、コカ・コーラ(Coca-Cola)、アディダス(adidas)、マクドナルド(McDonald's)、フォルクスワーゲン(VolkswagenVW)などの大手企業は、中国政府に反対の立場をとることには乗り気でないのが実情だ。

 一方で、スポンサー企業に対する人権活動団体などからの批判は厳しさを増している。

 チベット独立を支援する学生組織「Students For A Free Tibet」では、国際オリンピック委員会(International Olympic CommitteeIOC)に対しチベット自治区を聖火リレーのルートからはずすようもとめているほか、スポンサー企業をターゲットとした草の根運動を計画している。

 紛争が続くスーダン西部ダルフール(Darfur)地方問題で、同国政府に影響力を持つ中国政府への圧力をかけることを目的とした団体「Dream for Darfur」は、すでにスポンサー企業に対して草の根運動を展開している。

 ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のウィットルド・ヘニス(Witold Henisz)教授も、「北京五輪を支援する企業には、政治的潮流を読み取り誘導する責任がある」と主張する。ただし、「中国政府の怒りを買う行為はできない。絶妙なバランスが必要で、高度な外交スキルが求められる」とも付け加えた。

 一方、コカ・コーラ、サムスン(Samsung)、レノボ(Lenovo)といった聖火リレースポンサー企業は、チベットや中国の人権問題などへの抗議の場と化した聖火リレーの場にロゴを提示することを控えている。長野で26日に行われた聖火リレーでは、これら3社は沿道から広告を全面撤退していた。
 
「普段であれば、こうした企業は先を争って露出を狙うはずだ」と、スポーツ政治学を専門とする香港(Hong Kong)のブライアン・ブリッジス(Brian Bridges)嶺南大学(Lingnan University)教授は述べる。

「しかし一方では、投資資金に見合う成果が欲しいはずだ。北京五輪が始まるまでは影を潜めながらも、ひとたび五輪が始まれば、貪欲に存在をあらわすだろう」とブリッジス教授は語った。(c)AFP/Charles Whelan