【3月8日 AFP】米大統領選の民主党指名候補戦はヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員とバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員との接戦が続くなか、民主党を支持する米国女性はジレンマに陥っている。選ぶべきは初の女性米国大統領か、それとも初のアフリカ系大統領か・・・

 指名候補選当初、女性層の間でクリントン氏はバラク氏に対し、2対1の大差の支持を集め優位は明らかだった。

 だが予備選が進むにつれて、若さと笑顔と抜群の演説力を武器に全米を遊説するオバマ氏のカリスマ的魅力に、同氏支持にまわる女性が増え始め、筋金入りの女性運動活動家たちを悩ませている。

「要するにロック歌手に憧れるのと同じで、パワーや興奮を求めているだけ」と女性運動活動家でテキサス州ダラス(Dallas)郡民主党支部長を務めるダーレーン・エウィング(Darlene Ewing)氏はシアトル・タイムズ(Seattle Times)紙に語る。

 クリントン氏のほかに有望な女性候補はいないことから、エウィング氏は、クリントン氏が今回指名を獲得できなければ「私が女性大統領の誕生を見届ける機会は一生ないだろう」と危惧(きぐ)する。

 全米22の州で一斉に予備選・党員集会が実施された「スーパー・チューズデー」ではクリントン・オバマ両候補の間で票は割れたが、これ以後オバマ氏は、クリントン氏の支持基盤である女性層に着実に食い込みを見せてきた。

 オバマ氏が勝利した直近の4州での予備選で、同氏は女性票の56%を獲得しクリントン氏の42%を上回った。
 
 その後、4日に実施されたテキサス(Texas)、オハイオ(Ohio)の予備選の出口調査によると、クリントン氏はそれぞれ54%、53%の女性票を獲得し、同45%、43%のオバマ氏に差をつけ、女性票の巻き返しに一定の成功をしている。

 女性運動活動家のなかには、オバマ氏に投票することは、本質的には男性優位主義を支持となり、女性問題の後退を意味するとの主張もみられる。

「女性よりは黒人の方がましとの考えでオバマ候補を支持する人々も多い。こうした人々は、黒人と白人男性であれば、間違いなく白人男性を選ぶだろう」と、女性運動団体「National Organization of Women」のオハイオ支部のマリオン・ワグナー(Marion Wagner)氏は語る。「2008年にもなって、いまだに『黒人か女性か』という問題に悩まされるとは思ってもいなかった」

 さらにこの問題は、米国女性にとって「女性差別」と「人種差別」のどちらを重視するかとのジレンマでもあり、また世代間ギャップの問題でもある。オバマ氏の「雄弁な演説」と「変化のメッセージ」に魅せられているのは、明らかに若い世代の女性たちだからだ。実際65歳以上の白人女性によるクリントン支持は変わっていない。

 しかし、女性としての義務感や団結感のみでクリントン氏を選ぶことが正しい訳ではない。

 フリージャーナリストのニナ・ダーントン(Nina Darnton)氏はハフィントン・ポスト(Huffington Post)紙の電子版で、「女性問題を着実に実行しうる男性候補者に投票することは、フェミニズムに反する行為ではない」と述べている。(c)AFP/Virginie Montet