【2月19日 AFP】米国で裁判所の令状なしで市民の通信を盗聴する権限を大統領に付与した時限法「外国情報監視法」が16日、期限切れで失効した。下院で同法の恒久化法案を阻止した民主党に対し、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は15日、激しい非難を浴びせた。同法案をめぐっては、ブッシュ政権が掲げるテロ攻撃抑止と、同時に政府の義務である市民的自由やプライバシーの保護が対立する中、民主党との政治的主導権争いが激しさを増している。

 同法案は前週、上院で可決されたが、下院では多数派の民主党が失効前の改定案成立を阻止した。ブッシュ大統領は民主党に対し、「わが国をさらなる攻撃の危険にさらした」と強く非難した。下院での阻止により同時限法は失効して議会は2月末までの休会に入った。

■上院可決も、下院は追認を拒否

「外国情報監視法」による監視プログラムは、米国内および海外との通話や電子メールなどの通信を裁判所の令状なしで盗聴することを情報当局に許可している。また改定案には協力した通信企業に免責を与える内容が盛り込まれていた。

 ブッシュ政権および共和党と、民主党が支配する議会との間で政治的優位性を競って応酬が続く中、上院は前週、同法を恒久化する改定案を可決したが、下院はこれを追認することを拒んだ。

 上院での可決についてブッシュ大統領は「上院は超党派でこの法案を可決した。わが国の情報機関に、われわれを現実の脅威から守ることを可能とする道具を与えた」と満足感を示していた。

 しかし、下院のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)議長(民主党)は、同法案はプライバシー保護法を侵害するとの懸念を示すとともに、盗聴に協力した通信企業に一律免責を与える方針についても問題だと指摘し、ブッシュ大統領は「恐怖につけ込み、議員らを脅している」と強く反論した。

■ペロシ下院議長「大統領は恐怖を利用している」

 休暇前最後の14日の下院審議開始前、ペロシ議長は「大統領は、米国民を守るために自分が必要な権限すべてを持っていることを完全によく理解している」と述べ、しかし「ブッシュ大統領は、自分が国民に提供できるものは恐怖以外に何もないといっている。恐怖感を利用してこの法案を通すことは建設的ではない」と断じた。

 法案通過に賭け、ブッシュ大統領は予定していたアフリカ歴訪の延期をちらつかせた。ホワイトハウスのスコット・スタンゼル(Scott Stanzel)報道官は、本気でなければ大統領がそうした発言をすることはなかっただろうと前提し、それでも「下院が動く気配を見せないことが明白となったので」予定通りアフリカ歴訪に出発したと述べた。

 ブッシュ氏はアフリカへ旅立つ直前に再び、12日間の休会前に同法案を可決しなかった下院に非難を向け、「良い法案、つまり上院が可決した法案を一刻も早くわたしの机の上に持ってきて欲しい」と強い口調で求めた。(c)AFP/Kerry Sheridan