【2月3日 AFP】殺虫剤が混入した中国製冷凍ギョーザによる中毒事件に日本中が騒然としている。今回の事件について専門家の中には、日本全体を輸入食品にほぼ依存する状態に導いた農業政策に対する警鐘だと唱える声もある。

 前週、問題となったギョーザの輸入元が事件と、少女1人の重体を発表して以来、全国で300人近くが不調を訴え、病院での治療を求めた。

 同ギョーザの輸入元以外にも日本の複数の大手食品企業は、該当する中国の工場で生産されたと思われる冷凍食品や調理済み食品の回収を発表した。また日本側の当局は中国政府に食品安全を確保するよう警告した。

■食料自給率は40%、先進国中最低

 しかし、今回の問題は別の厳しい現実にも光を当てている。

 国内の食料消費のうち自国で生産された食料の割合を示す食糧自給率で、日本は40%で先進7カ国(G7)中最低の割合だ。シンクタンク、日本総研(Japan Research Institute)の新美 一正(Kazumasa Niimi)主席研究員は、日本の食品産業は外国製品なしでは決して自立できないと指摘する。

■他国への食料依存、安全保障は貧困国並み

 新美氏によると、外国からの輸入食品に対する懸念が存在したとしても、日々の食料需要を満たすためには、日本はそうした食品の受け入れに甘んじるほかない状態だという。「日本人は貧困国の食糧事情をばかにするかもしれないが、食料安全保障に関していえば日本も同じくらい悪い」と警告する。
 
 今回の事件のギョーザの製造工場がある中国は、輸出前の検査では殺虫剤は検出されなかったとしながらも、徹底的な調査を約束した。中国は輸出製品に度重なる安全問題が発覚し、急成長中の経済にも打撃となっている。

 中国の工場での不備などが何も発見されていないことから、日本側の警察は被害に遭った家族による「パッケージに小さな穴があった」という証言についても捜査を進めている。

 しかし、ギョーザ事件に端を発した食品への不安はここ数日の報道の見出しを独占しており、中国製品全体に対する認識悪化まで招いている。消費者の間からは「中国製の食品を買うのは怖い」という声も聞かれる。

 日本政府は最近、7年以内に食料自給率を45%にし、また最終的には50%まで引き上げることを目標として設定した。農林水産省のある幹部は「われわれは長い間、他国からの食料供給への大きな依存は日本の食料安全保障を損なうと警告してきた。今回のギョーザ事件はその一例だ」と語る。「農業という観点では日本には地理的な限界がある。しかし、バランスの取れた食料供給を目指す努力が必要だ」(c)AFP/Shingo Ito