【11月29日 AFP】オーストラリア総選挙で勝利した野党・労働党のケビン・ラッド(Kevin Rudd次期首相(50)は29日、新内閣の閣僚名簿を発表した。教育や労使関係、環境などに重点を置き、11年続いた保守派政権、ジョン・ハワード(John Howard)首相の遺産に決別する構えだ。

 ラッド氏自ら「新鮮なアイデアにあふれたチーム」と呼ぶ新内閣には、女性4人や元ロックスターが入閣した。また、新たに環境関連ポストを2つ設けたほか、好調な経済には無関心という批判をおさめる配慮も随所にみられる。

 労働党には各派閥からの要望を調整して組閣する慣習があるが、これにくみせず自身による閣僚選びを重視した同氏は「これは未来のための、わたしが選んだチームだ。この国の首相として選ばれたわたしの仕事は、国を統率する最適のチームを指名することで、その仕事を終えたところだ」と述べた。

■副首相に初の女性、ロックスターも入閣

 副首相には、ジュリア・ギラード(Julia Gillard)労働党副党首が指名された。女性の副首相起用は同国で初めてとなる。ギラード氏は、ラッド氏が政策の核とする2つの分野で、教育相および雇用・職場関係相を兼任する。ギラード氏は雇用相としても、批判を浴び今回の政権交代につながったハワード政権の職場改革を逆転させるプロセスを監督する役割を担う。

 外相には労働党の戦略担当で、資源の豊富なウエスタンオーストラリア州選出のスティーブン・スミス(Stephen Smith)氏、貿易相には同党元党首のサイモン・クリーン(Simon Crean)氏をあてた。

 選挙期間中、前与党はラッド氏が政権をとれば経済は破たんすると主張していた。これに対し、ラッド氏は財務相にWayne Swan氏、予算行政相にはLindsay Tanner氏と自身の盟友を指名し、「彼らは、すでに各省で書類に目を通すなど、任務に着手している。2008年度の予算編成準備に向け、次週にもこれらの省の官僚らと会議を行う予定だ」と強調した。

 計20人の新閣僚は、閣外大臣10人と共に次週3日に就任する。

■京都議定書批准を掲げ、気候変動担当相を新設

 労働党が選挙公約の一つとして掲げた環境関連では、気候変動担当相を新設した。同大臣にはペニー・ウォン(Penny Wong)上院議員が就任する。もう一方の環境相には元ロックミュージシャンのピーター・ギャレット(Peter Garrett)氏が指名されたが、同氏は選挙期間中、環境問題における主要課題である気候変動に関して失言を繰り返す失態を重ねている。
 
 ラッド氏が早期批准を目指す京都議定書(Kyoto Protocol)に関しては、ウォン気候変動担当相が交渉にあたる。オーストラリアが京都議定書を批准した場合、批准していない経済先進国は米国のみとなる。

 インドネシアのバリ(Bali)島で12月に開催される気候変動に関する国際会議には、ラッド氏も環境関連両大臣を伴って出席する予定だ。

■イラク撤退案で米国と距離か

 労働党内では、ラッド氏を中心にイラクからのオーストラリア軍撤退案の支持派が多数だ。同問題を担当する国防相にはJoel Fitzgibbonが指名された。ハワード政権がジョージ・W・ブッシュ(George W.Bush)米大統領と蜜月ともいえる関係を維持したのに対し、撤退案により米豪関係は距離が開く可能性がある。

 また、ラッド氏は国境地帯の警備も重要課題としてあげており、これを担当する移民・市民権相にクリス・エバンス(Chris Evans)労働党上院院内総務を指名した。前ハワード政権は、亡命希望者や不法に入国する難民に対し厳しい措置をとっていた。

 そのほか、ロバート・マクレランド(Robert McClelland)同党外交問題報道官が法相に、論争の的となっている北部特別地域(Northern Territory)一帯の先住民居住地域に対する開発問題を扱う家族・社会奉仕・先住民問題相にジェニー・マクリン(Jenny Macklin)氏が就任する。

 ハワード首相をシドニーの選挙区で敗った元テレビキャスター、マクシーン・マキュー(Maxine McKew)氏は首相付政務次官に任命された。(c)AFP/Greg Wood