【10月30日 AFP】カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は29日、中国政府の警告を無視して、同国首相として初めてチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世と公式会談を行った。

 ジェイソン・ケニー(Jason Kenney)多文化主義・カナディアン・アイデンティティ担当閣外相は「歴史的な会談だった」と評価し、「チベットの人々のために文化的自治だけを主張している72歳の平和主義者の僧侶を攻撃することは逆効果だというメッセージを全世界が受けとってくれるよう期待する」と述べた。

 同相によると、会談は約40分間、人権問題、チベットの歴史、チベットの人々の窮状などについて「十分かつ率直な意見交換」が行われたという。

 ダライ・ラマは、カナダ名誉市民の地位を与えられたことに感謝の意を示した。

 先にダライ・ラマから懸念が表明されていたアフガニスタンにおける北大西洋条約機構(NATO)軍主導の多国籍軍による戦闘任務については、会談では触れられなかった。

 この会談を受けて中国の劉建超(Liu Jianchao)外務省報道局長は30日、「こうしたカナダ側の行為は中国人民の感情を著しく傷つけ、中国・カナダの関係を大きく損なわせた」として激しく非難した。

 さらに会談が「中国の内政問題へのはなはだしい干渉」だと主張し、チベットが中国の一部だとする政府の立場をあらためて表明した。

 中国は、ダライ・ラマを中国からのチベットの独立を主張する危険な「分離主義者」とみなし、各国首脳に対して会談に応じないようこれまで再三にわたって警告を発しているが、今年に入ってから米国のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相、オーストラリアのジョン・ハワード(John Howard)首相が相次いでダライ・ラマと会談している。(c)AFP/Michel Comte