【10月27日 AFP】(28日一部訂正)フランス政府は27日、チャドから子ども103人を密かにフランスに連れ出そうとしたとして現地当局に逮捕、拘束されたNGOメンバーらフランス人9人について、「非合法で無責任」な行為を働いたとして非難した。9人は依然として拘束を解かれていない。

 逮捕されたのは、フランスの援助団体「Arche de Zoe」の関連団体メンバーとジャーナリスト3人を含む9人。子どもたちを「救出」するために出国させようとした未遂事件に関与したとして25日にチャドで逮捕、拘束された。

 フランスのラマ・ヤド(Rama Yada)外務・人権担当閣外相は、政府が子どもたちの出国を阻止しようとしたことを明らかにした。

 同次官はテレビで「この行為を禁止・阻止するために全力を尽くした。しかし彼らは密かに、誰にも告げず、当局の許可も得ずに実行した。非合法で無責任な行為に走った」と非難した。

 チャドのテレビは26日夜、同国東部のアベシェ(Abeche)で拘束中のフランス人が手錠をされ床に座っている姿や、1歳から8歳の子ども男女103人の様子を伝えた。なかには泣いている子どももいた。

 同日、パリ(Paris)のチャド大使館前では、チャドから到着する子どもたちを引き取ることになっていた家族ら100人ほどが詰め掛け、子どもたちの飛行機が出航差し止めとなったことを「まったくの謎」だとして抗議した。

 「Arche de Zoe」は、隣国スーダンでのダルフール紛争で危機的状況にある子どもたちを「死から救う」ため連れ出そうとしたと主張しているが、チャドの首都ヌジャメナ(N'Djamena)に駐在するユニセフ(UNICEF)の代表は、子どもたちの大半はチャド出身で、孤児だという証拠はないと述べた。

 またチャドのイドリス・デビ(Idriss Deby)大統領は、子どもたちをフランスに連れ出そうとした行為が「純然たる誘拐」だとして援助団体メンバーに対する「厳しい処罰」を要求した。

 伝えられるところによると、子どもたちはフランスで養子縁組を行うか、里親に引き取られることになっていた。こうした希望者たちはArche de Zoeに、2800(約46万円)-6000ユーロ(約100万円)を支払っていた。
 
 26日、子どもたちを出迎えるためパリ郊外の空港に集まっていた養子・里親希望者らは、市内に移動しチャド大使館前で抗議活動を行った。

 抗議に参加した、ダルフールの孤児受け入れを希望する家族会「Collective of Families for the Orphans of DarfurCOFOD」のMaryse Cales副代表は、拘束されたメンバーの釈放を求め、子どもたちの今後の待遇を知りたいと話した。そして今回の事件について「彼らは皆、許可を得ている。理解できないのは、チャド当局の心変わりだ。まったくの謎だ」と話した。

 Arche de Zoeのステファニー・ルフェーブル(Stephanie Lefebvre)事務局長は、関連団体の行為は全くの同情心からだと述べ、養子縁組のために子どもを確保したとの疑いを一切否定した。同団体では子どもたちを「死から救う」ためにスーダン西部のダルフール地方とチャドの国境地帯から移送したと主張している。 これまでに約300家族から子どもを引き取るとの申し出があったという。

 この日、フランス軍は、チャド各地でこの援助団体メンバーを「ほかの多くの組織にするのと同じように」輸送したとの報告を確認した。報道官のChristophe Prazuck海軍司令官が明らかにしたもので、この輸送はチャド政府当局と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の許可を得ており「仏軍の手段を使って子どもを運んだことは一度もない」と付け加えた。

 チャドにはダルフール紛争による難民約23万6000人がいるほか、東部での軍と反政府武装勢力との戦闘で、約17万3000人が難民や避難民になったと見られている。ダルフール紛争では少なくとも20万人が犠牲者となった。(c)AFP