【10月23日 AFP】パキスタンのベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相(54)のめいにあたるファティマ・ブット(Fatima Bhutto)氏(25)が21日、AFPとの独占インタビューに応じ、ブット氏には自身を狙った爆弾テロで139人が死亡した事件の責任があると語った。

 新聞のコラムニストで詩人、そして故ズルフィカル・アリ・ブット(Zulfikar Ali Bhutto)元首相の孫でもあるファティマ氏は、爆弾テロの2日後にカラチ(Karachi)の豪邸でインタビューに応じた。

■「爆弾テロの死者はブット氏の私的なショーの犠牲者」

 ファティマ氏は、ブット氏はテロ攻撃の予告があったにもかかわらず、数十万人の群衆の中で「防弾車両による」帰国パレードを決行、そうした自身の「私的なショー」のために多数の命を犠牲にした責任があると言明した。

「犠牲者たちは、彼女(ブット氏)の私的なショーのために死んだようなものです」(ファティマ氏)

 さらに、ブット氏のパキスタン帰国は同国の混乱を深めるだけだとも語った。
 
 ファティマ氏の父親は、ブット氏の兄弟の故ムルタザ・ブット(Murtaza Bhutto)氏。ムルタザ氏は、1979年に軍事独裁者ジアウル・ハク(Zia-ul Haq)大統領が父親の故ブット元首相を処刑後、左翼ゲリラ組織の指導者となった。そして、首相になったブット氏とは、父親の政治理念を継承せず父親を裏切ったとして袂を分かった。1996年に警察に殺害されたが、その真相は闇の中だ。

■パキスタン人民党は「ブット氏責任論」を否定

 ブット氏の帰国から数時間後に発生した自爆テロについては、イスラム過激派の関与が取りざたされている。ブット氏が総裁を務めるパキスタン人民党(Pakistan People’s PartyPPP)は、ファティマ氏のこうした「ブット氏責任論」を言外に否定する。

 PPPのある幹部は「死んだ人たちの家族は誇りに思っていますよ。狙われたのはブット元首相だったのですから。あの場にいた人たちはリスクを承知していたのです」と語った。

 ブット氏の今回の帰国については、テロとの戦いでブット氏との共闘を望む米国が強く後押しした。

■ブット氏の痛烈な批判者

 パキスタンのメディアでしばしば「将来の国家元首」ともてはやされてきたファティマ氏は、ここ最近、おばへの容赦ない批判を展開している。

 インタビューが行われたリビングルームには、ファティマ氏の祖父の故ブット元首相、父のムルタザ氏をはじめとする親族の肖像画が並ぶが、ブット氏のものは見当たらない。海辺のファティマ氏の自宅は、故ブット元首相宅の隣にある。

 ブット氏が過激派対策への意欲を示している点について、ファティマ氏は「ブット政権時代にイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)が結成されたことを、誰も指摘しない」と語る。 

 おば同様に英米の大学で教育を受けたファティマ氏は一方で、ペルペズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領が汚職罪などに問われていたブット氏に恩赦を与え、帰国を許したことを非難し、「(恩赦は)この国にとって極めて恐ろしいことです」と述べた。

■政界入りは否定

 ファティマ氏は今のところ、政界入りの意思はないという。「ブット家に生まれたからといって、選挙に立候補する資格がわたしにあるとは思いません。そんな権利を生まれながらに持っているわけではないし、将来的な可能性について今お話しすることもできません」

 ファティマ氏は、新聞に政治や人権問題に焦点をあてたコラムを書いていることを一種の「政治活動」だと話す。「政治に参加する方法は他にもたくさんあり、今は(コラムを書くという手段を)選んだのです」(c)AFP/Danny Kemp