【10月1日 AFP】ミャンマー軍事政権を長年にわたり公式に支援してきた中国。その一方で中国は、政権交代が起きた場合に備え、反体制派ともひそかに接触を保ってきたことが分かった。ミャンマーの亡命者組織やアナリストが証言した。

■長期的な2国間関係維持を最優先

 中国が双方に肩入れするのは、国際社会の中で公平な姿勢を示したい一方で、ミャンマー政府のありようにかかわらず、戦略的に重要な同国との長期的な関係に重点を置く姿勢を反映したものだという。

 香港・嶺南大学(Lingnan University)のポール・ハリス(Paul Harris)教授は「軍事政権の勢力が衰え打倒は避けられないとみれば、相手が誰であれ、中国はミャンマーとの良好な関係を維持するための交渉を直ちに開始するだろう」と予想する。

 ミャンマー軍事政権が僧侶主導の反政府デモを武力弾圧する姿勢を強めているにもかかわらず、中国はこれまでのところ、そうした行為を非難することを避けている。

■軍政支援の一方で反体制派とも接触

 一方で中国は、タイへの亡命者らで組織するビルマ連邦国民連合政府(National Council of the Union of BurmaNCGUB)など、民主化活動団体とも非公式な接触を続けていると、NCGUBの関係者は打ち明ける。

 中国の狙いは、国境を越えた麻薬取引などの犯罪に関する情報を得ることにあり、場合によってはNCGUBの関係者が中国を訪問し、中国の当局者と非公式会合を行うこともあるという。NCGUB広報がAFPに語ったところでは、こうした接触は以前からあり、最近になって頻度が増えたという。ただし、それ以上の詳細は明かさなかった。

■ミャンマー民主化勢力側も現実路線

 NCGUB側にとっても、目覚ましい経済成長を遂げつつある北方の大国、中国との関係維持は極めて重要であり、接触は双方が求めているものだとNCGUB関係者は話す。

 民主化活動団体の横断組織Asia-Pacific People’s Partnership on Burmaの関係者も「中国の政策に怒りを覚えるのはもちろんだが、中国は永遠にわが国の隣国であり、良好な関係が必要だ。今こそ中国はミャンマーの現体制か民主化かを選ぶべきだ」と語った。

■北京五輪への影響回避も目的の1つか

 中国はミャンマーの反政府勢力支持を打ち出すことは避け、温家宝(Wen Jiabao)首相は29日、「全当事者」が自制の姿勢を示し、「平和的手段」を通じて事態の安定化を図るよう求めた。

 この姿勢は、他国の内政に干渉しないという中国の長年の方針に沿ったものだが、自国の人権問題などをめぐる批判をかわす狙いもあるとみられる。中国が1989年に起きた天安門事件で、何千人ものデモ参加者を武力弾圧したのは記憶に新しい。ミャンマー政府との関係が原因で、2008年の北京五輪に影響が出ることを防ぎたいとの思惑もあるようだ。(c)AFP/Dan Martin