【9月26日 AFP】 ミャンマーで拡大している僧侶らによる反軍事政権デモに対し、政府が治安部隊や警察を動員して武力鎮圧に乗り出したことを受け、米国や欧州連合(EU)が同国への制裁を強化する構えだ。

26日、ヤンゴン(Yangon)市で抗議の参加者と見守る市民数千人に対し殴打、催涙弾発射するなどして、数十人の身柄を拘束したミャンマー当局に対し、国際社会の非難は高まっている。

■EU、ミャンマーに制裁措置検討

同日EUは、先んじている米国の発表に追随し、ミャンマーの軍事政権に対する制裁をさらに強化する用意ができていると発表した。

しかし、制裁強化の効果をめぐっては国際間で意見に温度差があり、中国は同盟国でもある隣国ミャンマーに対しあからさまな圧力をかけることに拒絶を示しているほか、オーストラリアは現在以上の制裁を新たに科すことはしないとしている。

複数の人権団体は国連安全保障理事会(UN Security Council)に対し、国連の武器禁輸決議を採択し、中国とインドに軍事政権への武器供与を停止させるよう求めた。

ミャンマーでは同日、抗議デモに対しこれまで取り締まりを控えていた当局が、最大都市のヤンゴン(Yangon)で武力による鎮圧を開始。デモ隊と群集数千人を解散させようと、治安部隊が空砲を発砲、催涙弾を発射した。

西側では軍事政権を正式政府と認めず、クーデター前の国名ビルマを現在も正式名称として使用する例が多い。

EUは声明の中で「(ミャンマー当局が)非武装・非暴力のデモ参加者に武力を行使するならば、従来の制裁をさらに強化するだろう」と発表した。

フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領は同日、亡命中のミャンマーの民主化活動家たちおよびジャン・ピエール・ジュイエ(Jean-Pierre Jouyet)欧州問題担当副大臣と会談する予定で、ミャンマー軍事政権の弾圧行為は「許しがたい」と述べた。国連総会に出席中のサルコジ大統領は「(抗議参加者に対する)フランスの支持を伝えたい。われわれは暴力による抑圧を許さない」と述べた。

■米、新たな制裁措置へ

またジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領も国連総会の場で、ミャンマーに対し米国が新たな制裁措置を発動することを明かし、「恐怖による支配」を停止させるため国際社会の行動が必要だと呼びかけた。具体的には、軍事政権やその経済的支援者に対する経済制裁を強化するとしている。ブッシュ大統領は「すべての国が持てる外交および経済カードを使って、ビルマ(ミャンマー)の人々の自由奪還を支援しなければならない」と訴えた。

EUと米政府は何年にもわたり、ミャンマーで民主化を主張する反政府派を抑圧し続ける同政府に対し、貿易および金融制裁を行ってきた。しかし、同政権は国際社会からのすべての圧力を振り払ってきた。

■国際的な制裁措置を、専門家

専門家らは、新たな制裁が発動された場合、国際社会は速やかに追随すべきだと主張する。軍事政権誕生以降、例のない規模で広がった民主化要求に従うよう、ミャンマー政権に圧力をかけるべきだという。

「米アセアン(ASEAN)・ビジネス会議」の幹部を務めた経験のあるウォルター・ローマン(Walter Lohman)氏は、「制裁強化は(民主化要求に対する)精神的支援の表明として重要。問題は何によって、どうしたら、ビルマ(ミャンマー)に変化をもたらすために影響を及ぼせるかだ。連帯した取り組みが大切だ。特にインドとアセアン諸国との協調が」と述べている。

■オーストラリアは制裁参加を否定、中国・ロシアは拒否

 しかし、 オーストラリアは米国による制裁強化とは一線を置くとしている。アレグザンダー・ダウナー(Alexander Downer)豪外相は制裁強化が「影響をもたらすことはまったくないだろう」と述べた。同外相は、国際社会においてミャンマーの軍事政権に政治改革の推進を説得できるのは中国だけだと明言。またオーストラリアとミャンマーの貿易規模が極めて小さい上に、同軍事政権への武器輸出はすでに禁じていると述べた。「西側諸国が何かをしても、(ミャンマーの)方向性が突然変わることがありうるとは思えない」。

一方、国連安保理では1月、ミャンマー政府にすべての政治犯の釈放を要請する決議案が提出されたが、中国とロシアが拒否権を発動した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は安保理に対し、ミャンマーでの人権弾圧を阻止するため、国連監視団の派遣が不可欠だと主張した。米国ワシントンD.C.のミャンマー大使館前では、アムネスティ主催の抗議デモが行われ、仏僧らも参加した。

同じく人権監視団体のヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch) は、ミャンマーの同盟国である中国、タイ、ロシア、インドなどに対し、ミャンマー政府に非暴力抗議行動を行っている人々との対話を促すよう、呼びかけた。

同団体のアジア担当ディレクター、ブラッド・アダムス(Brad Adams)氏は、「軍事政権が誰かの声に耳を貸すとすれば、それは軍事的および経済的に緊密な同盟関係にある国の声だ。そうした国は今こそ、ビルマ(ミャンマー)国民の幸福や健康に危惧を抱いていることを表明する時だ」

■日本の反応

ミャンマーに対する主要援助国のひとつ、日本は同政府に抗議に対する冷静な対応を求めた。高村正彦(Masahiko Komura)外相は26日、進展を注意深く見守ると約束した。

日本はミャンマーに関しては、珍しく米国やEUと歩調をあわせず、軍事政権発足後も人道支援が目的だとして援助を続けている。(c)AFP