【9月24日 AFP】僧侶による軍事政権への抗議行動が続くミャンマーの最大都市、ヤンゴン(Yangon)で23日、僧侶や尼僧など2万人余りが街頭を行進した。

 行進を目にしたある50代の女性は、うれし涙を流し、声援を送るため歩道に駆け寄った。軍政による圧制に苦しむ多くの人々と同じように、彼女もまた僧侶らを、民衆を代表して行動を起こした、秀でた倫理的権威とみなしているからだ。

「彼らは成功すると思います。なぜなら、彼らの動機は真の親切心だからです」と同女性。「近所の人たちもみな、彼らのために祈っています。ただし、家の中からだけです。だれもが、僧侶のことを話しています。でも(軍が)恐ろしくて、彼らに加わって街頭で行進したり、祈ったりすることはできないのです」などと話した。軍への恐怖心から名前は明かさなかった。

 国民の90%近くが仏教徒で、僧籍者が日常生活で大きな精神的役割を担っている同国では、国民感情の大半はこの女性と等しい。

■僧院の修行が抗議デモの下地に

 タイで活動するミャンマー評論家ウィンミン(Win Min)氏によると、ミャンマーの少年たちは、16歳の誕生日を前に見習い僧として、また20歳前後の時には修行僧として僧院生活を送る。実際にはほとんどすべての家庭に、僧侶としての時期を過ごした人間がいることになる。今回のデモの最前線で、大量に組織だって若者が動員された背景には、こうした国民的習慣があるという。またミャンマーには常に入れ替わりながらも、40万人以上の僧侶が存在することになり、その80%は、若い僧侶らが修行する寺院が集中するMandalayに暮らしている。

■教育、福祉サービスの役割を担う僧院

 いつの時代もミャンマーには少なくとも40万人の僧侶がおり、その約80パーセントは、同国第2の都市、マンダレー(Mandalay)に住んでいる。同都市には若い僧侶が暮らし、学ぶ修行寺が数多くある。

 僧侶と民衆は多くの点で互いに支え合っている。僧侶は托鉢で受ける施しを頼りにし、民衆はこうした施しが来世でより高い次元に到達する助けになると信じている。

 ミャンマーの学校、病院、社会的諸サービスは軍政の怠慢により崩壊し、僧侶が次第にその隙間を生める役割を拡大させている、と説明するのは、同じくタイを拠点とするミャンマー人アナリスト、アウンナインウ(Aung Naing Oo)氏。

 同氏は「僧院は孤児院や学校として自らを開放した。エイズ(HIV/AIDS)関連事業など多くの社会福祉事業、草の根運動に参加を始めた。軍による暴力行為は、デモ拡大を招くだけ」と警告した。

■社会的破門を恐れる軍関係者

 僧侶の中には、過去20年近くで最大規模の抗議行動を率いることに加え、兵士からの施しを拒んだり、兵士の家族の供養を拒否するなど、軍関係者を冷遇するものもいる。

「こうした行為はローマ法王がカトリック教徒に、もうキリスト教徒ではないと言うようなものであり、破門になれば、社会的な恥で、社会的に隔離される」と、ミャンマー人権団体、Alternative ASEAN Network on Burmaのデビー・ストザード(Debbie Stothard)氏は語る。

 一方で、「僧侶は、殺人犯や婦女暴行犯の供養を禁じることすら認められていない。供養や支援の禁止が認められるのは、仏教機関を攻撃あるいは脅かした人に対してだけ」と指摘した。(c)AFP