【8月30日 AFP】政治、経済面で世界への影響力を増し、アジア太平洋経済協力会議(APEC)への加盟を目指すインド。新規加盟国候補としては最有力とみられているが、9月8、9日の両日にオーストラリアのシドニー(Sydney)で開催される次回APEC首脳会議での加盟決定は、難しい情勢だ。

 APEC新規加盟国・地域に関する10年間の猶予期間(モラトリアム)は、今年で期限切れを迎える。次回首脳会議では、APEC拡大が議題となる見通しだ。新規加盟にはインドのほか、スリランカやコロンビアなどが立候補している。

 ただ、開催国オーストラリアのジョン・ハワード(John Howard)首相は、インドの加盟を強く支持するとしつつも、今度の首脳会議は「モラトリアムの延長」に終わる可能性が高いとの見方を示した。

 APEC加盟はインドの長年の悲願。加盟実現に向けて、地理的条件、経済規模、加盟国との貿易・投資関係などをアピールしている。

 インド情勢の専門家、ウロンゴング大学(Wollongong University)のSandy Gordon準教授は、経済面に加え、気候変動対策など世界規模での課題への取り組みの面からも、インドの加盟は有利とみる。

 一方、インド以外の12の加盟希望国・地域のうち、少なくとも一部の加盟を認めない限り、インドの加盟も認めるわけにはいかない、と見方も強い。オーストラリア国立大学(Australian National University)で政治・国際関係学を教えるマイケル・マッキンリー(Michael McKinley)上級講師は、「インドの加盟を認めるなら、パキスタンの加盟を認めない理由はないはずだ」と話す。

 マッキンリー上級講師は、インドの加盟には政治的な背景があり、中国の強大化を抑制する意味があると指摘。オーストラリア政府が日米豪の安全保障枠組みにインドを加えることを検討している、と述べた。

 Gordon準教授はこの見方を否定。APECの役割をより広範な国際問題への対処へ拡大しようとの動きがあることは事実としながらも、基本性格はあくまで貿易機関だと強調した。(c)AFP/Madeleine Coorey