【8月16日 AFP】米政府が偵察衛星の使用目的を国外監視用のみならず国内監視へと拡大変更する準備を進めていることが、米当局関係者によって15日、明らかになった。

 これにより、米国内の各連邦政府や地方自治体レベルで衛星画像や捜査関連の情報データを利用が可能となり、米政府は国内の対テロ取り締まりや警察活動に「空の目」も取り入れる意向だ。

 変更内容についてはマイケル・マコネル(Michael McConnell)米国家情報長官が5月に承認し、現在は米国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)の管轄下にある。

 同省は変更に基づき、民間機関からの衛星情報へのアクセス要請に応える「National Applications Office、(国家出願局)」を10月1日頃に新設する予定だ。同局では各申請を民間、国土安全保障、警察機関の3分野個別の実務委員会で取り扱うという。

 今回の決定では情報収集の手法も拡大され、物理的特徴により監視対象を衛星から追跡・把握する「計測・通信諜報(measurement and signature intelligenceMASINT)」なども可能とするとしている。

 偵察衛星の使用目的を拡大することで、国土安全保障省は国境沿いや港湾、橋などの基幹施設をスパイ衛星でより詳細に監視したい狙いがある。また、2001年の米国同時多発テロのような事件、ハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)のような自然災害発生時などへの対策にも使用できるとしている。

 チャールズ・アレン(Charles Allen)国土安全保障省次官補によると、これまでにも政治集会に対するテロ攻撃対策や大規模なスポーツ大会の警備などで、偵察衛星が臨時に使用されていたことはあったという。

 一方で、使用目的の拡大により、米政府の情報機関が米国内の個人の監視に衛星を使用する可能性もあり、人権に対する侵害が懸念されている。

 また、海外の敵対国などの米国外での監視を想定に設計された衛星は国内監視用には「機能過剰」であり、警察関連機関が操作できるものなのか、また使用方法などへの疑問も残されているという。

 ある高官によると、政府は今回の変更を十分に検討し、議会の各関係委員会に対する説明会も開いた。各委員会では新計画のための予算の再配分を承認しており「法的根拠を欠く部分は何もない」という。偵察衛星の使用目的決定の動きは15日、経済紙『ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)』が他紙に先がけて報じた。(c)AFP