【8月14日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は13日、側近中の側近であるカール・ローブ(Karl Rove)次席大統領補佐官が8月31日付で辞任すると発表した。ローブ氏の辞任は、ブッシュ政権の衰退の兆候と見る向きが多いものの、2009年1月に任期切れを迎えるブッシュ政権にとってそれほど大きな打撃ではないとする見方もある。

 ただ、ローブ氏の政治的手腕は非常に高かったため、辞任によりホワイトハウスの今後の政策などに注目が集まることは必至だ。

 ローブ氏は政権の黒幕的存在と見られ、イラク開戦にも関わったとされる。

 辞任の背後には、移民制度改革法案と年金改革法案の廃案を受けて政権を立て直したいとのブッシュ大統領の思惑があるのか、または2008年の大統領選を前に、身内の共和党からの要請に応じたのだろうか。

 米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のStephen Hess氏も、ミドルベリー大学(Middlebury College)のEric Davis教授も、「どちらもありえない」と口をそろえる。

 ローブ氏は、ブッシュ大統領が90年代にテキサス州知事になったころからの側近で、2回の大統領選と9.11米同時多発テロ後の対応での功績は高く評価されている。それだけに、同氏の不在はブッシュ大統領にとって大きな痛手となることが予想される。同氏の伝記『Bush’s Brain』を執筆したWayne Slater氏は、「ジョン・レノンを失ったポール・マッカートニーのようだ。(ジョン・レノンがいなくなると)音楽性が一変する」と表現した。

 一方、ローブ氏なき後のホワイトハウスが新しい音楽を奏でる可能性は、極めて低そうだ。

 Hess氏は、「変化はないだろう。大統領が7年以上在任する頃には、政策はセメントで固めたようになる。ローブ氏は主に国内問題について助言し、国際問題については関知していない。それに、民主党が多数派となった議会では、大統領派の意見は通らなくなるだろう」と分析。ローブ氏はブッシュ大統領の選挙参謀としては「天才」だが、統治戦略家としては「不成功だった」と評した。

 Davis教授も、政策に変化はなさそうだとしながらも、「政府は、政治状況にうとくなるだろう」と予測。民主党主導の議会が通過させた数々の法案に「大統領拒否権」で立ち向かうしかない現状にかんがみ、「ブッシュ政権のレームダック(死に体)化を示すもので、国内政策が停滞していることをも物語っている」とした。

 米国では、大統領選を前に、2期目の後半にさしかかった大統領の威光が低下しているような場合、今回のように側近を辞任させることは当たり前の光景となっている。(c)AFP/Laurent Lozano