【7月1日 AFP】米議会は、大統領に広範な通商交渉権限を与え、合意の承認のみを一括で議会で審議する貿易促進権限(ファストトラック、Trade Promotion AuthorityTPA)の更新を認めず、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は1日午前0時、その権限を失った。

 1月に共和党から議会での多数派の地位を奪回した民主党は、憲法上の通商権限を議会に取り戻すことや独自の通商政策立案に意欲を示している。

 5年近く続いたTPAが失効し、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド、Doha Round)の終結が危ぶまれるいま、米国は民主党主導の新たな通商政策に舵を切ろうとしている。

 TPAが失効する数時間前、米国と韓国は、1993年の北米自由貿易協定(NAFTA)以来、米国が結ぶ最大の自由貿易協定(FTA)となる米韓自由貿易協定に調印した。ただ、協定への議会の強い支持は得られなかった模様だ。

 米国のTPAは、国際交渉を迅速化するため、大統領に広範な通商交渉権限を与え、合意の承認のみを一括で議会で審議する制度。米通商交渉団は2005年、ドーハ・ラウンド進展のためにはTPAが必要だと主張し、ブッシュ大統領は2年の権限更新を勝ち取った。

 米国と関係各国はTPAの期限切れを利用し、ドーハ・ラウンドの進展を狙ったが、その原動力を失った現在、ドーハ・ラウンド進展に対する望みは薄れつつある。

 2008年11月の大統領選に向けた戦いが激化する中、1つの政党が行政、立法双方のコントロールを掌握しない限り、次期大統領がTPA更新を得られることはないとみられている。

 TPAの失効はまた、貿易赤字の拡大に直面する米国で自由貿易に対する意欲が衰えつつあることも浮き彫りにした。米国で製造業に携わる数千人が職を失ったのは、中国を始めとする国々との貿易赤字が数十億ドルに達したためだと非難する声も上がっている。

 下院民主党議員らは29日、米国の通商政策を改善する計画があると述べた一方で、経済不安を感じる米国の家庭が増えていることにも言及した。増加傾向にある対中貿易赤字への対応、米国の貿易協定、貿易関連法の強化などの対策を早急に取るべきだとした。

 一方、ブッシュ大統領のTony Fratto副報道官は「議会がTPAを失効させてしまうことは残念だ。貿易や世界市場における米国のリーダーシップを議会が放棄すれば、米国の経済や安全保障にダメージを与えるだろう」と語った。(c)AFP/Veronica Smith