【6月25日 AFP】任期が残り1年半となったジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は、「悪の枢軸」北朝鮮に対する姿勢を軟化し、外交政策の成功を狙う。

 前週には6か国協議の米首席代表クリストファー・ヒル(Christopher Hill)国務次官補が平壌を電撃訪問し、これまで北朝鮮の核問題への直接関与を拒否していたブッシュ政権の方向転換として多くの人を驚かせた。

 ブッシュ大統領は過去に、金正日(Kim Jong-Il)総書記を「ピグミー」「独裁者」「危険人物」などと呼び、北朝鮮側の感情を逆なでしてきたが、そうした愚弄する発言も最近では陰を潜めた。

■順調なのは北朝鮮問題だけ

 こうした変化について、米国の核問題専門家ジョセフ・シリンシオーネ(Joseph Cirincione)氏は、「ヒル国務次官補やコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)国務長官、そして大統領自身も、北朝鮮問題は外交政策上の勝利を収める機会だと認識しなおした」とみる。同氏の見解では、「外交政策が効果を発揮していると現政権が主張するのを目にできるのは北朝鮮問題だけ」だという。

 それでも、北朝鮮が核開発を放棄するという保障はなく、むしろヒル次官補の訪朝により、核問題交渉において北朝鮮側に優勢だという認識を与えてしまったと専門家らは指摘する。

 ブッシュ政権で国務次官補を務めた対北朝鮮強硬派のジョン・ボルトン(John Bolton)前米国連大使は、「おそまつな外交だ」と評する。北朝鮮政府は2008年の米大統領選挙まで交渉を引き延ばし、「現米政権の後に、より軟弱路線の政権が誕生することを期待している」のだという。ボルトン氏は、「北朝鮮はいつものパターンで、2月13日の6か国協議での合意事項の見直しを求めてくるだろう」と憶測する。

■米の譲歩、今後の交渉に悪影響か

 米政府による北朝鮮への単独接触で進展をみせたのは、同国の制裁でマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(Banco Delta AsiaBDA)」に北朝鮮関連資金2500万ドルが2005年以降、凍結されていた問題だ。凍結解除については米タカ派の強硬な反対もあったと米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は報じたが、資金返還に至るまでの数々の障害を克服し、数か月かかって送金が完了した。

 ボルトン氏は「資金問題で米政府はいくつもの譲歩を見せた。しかし、それでは北朝鮮側に対し、米国務省が交渉に慎重なモードになっていることを示しただけになってしまった。今後、交渉する相手(米政権)が変わることを期待する北朝鮮にとっては、よい予兆を与えてしまった」と語る。

 「資金問題における現政権の一連の譲歩がもたらした結果を見ればいい。もともと不正疑惑のあった口座の凍結と北朝鮮の核開発は別の問題だったものを、北朝鮮側が取引条件として関連させてしまい、その主張を米国側が受け入れてしまった」とボルトン氏は批判した。(c)AFP/P. Parameswaran