【6月14日 AFP】在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連Chongryon)が、元公安調査庁長官の緒方重威(Shigetake Ogata)氏(73)が代表取締役を務める投資顧問会社と、中央本部の土地と建物に関する売却契約を結んでいた問題で、緒方氏は13日に記者会見を開き、「在日朝鮮人のために、北朝鮮の事実上の大使館としての機能を保持するため、明け渡しを防ぐことが目的だった」と述べ、整理回収機構から資金返還訴訟を起こされている同連合会に協力する意図があったことを認めた。

 緒方元長官は会見で契約の事実を認め、「(売買契約を結んだのは)自分の琴線にふれる部分があったから。それでお助けしましょうと」思ったと述べた。売却後も1年間、総連側に建物の使用を認めるつもりだったという。

 朝鮮総連中央本部は東京都千代田区にあり、建物は10階建てで築21年。売買契約では土地・建物を、緒方氏が退任後に代表取締役に就任した投資顧問会社に約35億円で売却する予定だった。
  
 日本には、1910年から1945年に日本が朝鮮半島を植民地化していた時代、自発的および強制的な移住などで来日した朝鮮半島出身者やその子孫を中心に、約60万人の在日朝鮮人が在住している。しかし、そのうち朝鮮半島独立後に、日本が国交を結んでいない北朝鮮国籍を取得した人々と子孫の利益を、朝鮮総連では代表してきた。現在、朝鮮総連と関連を持つ人口は在日朝鮮人全体の約10%とみられている。

 一方、総連の幹部には、北朝鮮の最高人民会議(国会)の現職議員も含まれている。

 緒方氏は、「大使館としての機能を持つ中央本部の建物がなくなると、在日朝鮮人の人たちのよりどころがなくなり、分散して、いわば『棄民』みたいな立場におかれる。(同本部は)現実の問題としてなくてはいけないものだ」と契約に至った理由を説明した。しかし、売却契約が表面化し、資金調達が困難となったことから、契約は撤回すると発表した。

 情報収集を担当する公安調査庁の元長官と朝鮮総連本部との契約締結に対し、北朝鮮による核開発問題や日本人拉致問題をめぐり、同国政府への強硬姿勢を貫く安倍晋三(Shinzo Abe)首相は強い不快感を表明している。(c)AFP