【6月3日 AFP】ウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領が自身に批判的な民放テレビ局「RCTV」を放送停止に追い込んだことに対する非難が高まる中、大統領支持者が2日、首都カラカス(Caracas)で、チャベス大統領への支持を訴えるデモ行進を行った。

 同日デモに参加したのは、チャベス大統領の政策により恩恵を受ける公務員や会社員。落下傘降下兵時代に同大統領が着用していたベレー帽の色にちなんで赤いTシャツと帽子を着用し、「テレビとラジオの民主化」をスローガンに掲げた。行進する数千人の支持者は「チャベスは去らない!」と声を張り上げ、トラックやバスに積まれた拡声器からは、大統領を支持するメッセージが流された。

 ジェシー・チャコン(Jesse Chacon)通信相は「本日、ベネズエラは放送用の周波数帯を民主化し、一歩前進する」と発表した。これは、RCTVに割り当てられていた周波数が国営テレビ局「TVes」に引き継がれたことを意味する。

 チャベス大統領は前週、国内最古の歴史を持ち、高い人気を誇るRCTVの放送免許の更新を拒否し、同局を閉鎖に追い込んだ。国内ではこれに抗議するデモが相次ぎ発生。国際社会からも非難の声が上がっている。ベネズエラ(Venezuela)では2002年、軍首脳がチャベス大統領に対し辞任を要求し、一時暫定政権が発足するというクーデターが発生したが、同大統領はわずか2日後に大統領職に復帰している。RCTVはクーデターに際し、公然と同大統領の追放を要求していた。

 1日には、「表現の自由」を訴える多数の学生らがチャベス大統領に対する抗議活動を展開し、「国内の『不安定化』を企てた」として大統領支持者らによって告訴される事態に発展している。これについてチャベス政権の前副大統領、ホセ・ビセンテ・ランヘル(Jose Vicente Rangel)氏は学生らを擁護。「学生らは政府の転覆を謀ったわけではない。われわれは、彼らと対話すべき」との見解を示した。

■RCTVの閉鎖をめぐり、ベネズエラとブラジルが対立

 一方、RCTVの閉鎖をめぐる問題が、チャベス大統領と同じく左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)ブラジル大統領率いるブラジル政府との関係を悪化させている。

 ブラジルの上院は30日、チャベス大統領に対しRCTVに対する処遇を再考するよう正式に要請した。

 だが、チャベス大統領はこれに反論。「ブラジル議会はブラジル国内の問題について心配すべき」と語り、さらに「ブラジルが米政府の『部下』になっている」と非難した。

 これに対し、ブラジルのルラ大統領は同国議会を擁護。チャベス大統領に対し、ブラジル国内の問題に干渉しないよう伝えた。ブラジル国内の報道各社は、ルラ大統領の姿勢を支持している。

 フォリャ・ジ・サンパウロ(Folha de Sao Paulo)紙は2日、社説で「(ルラ大統領は)ブラジルの独立と民主主義の原則を守るために必要なことをした」と論じた。

 ベネズエラに対し圧力を徐々に強めるルラ大統領は、ブラジル外務省に対し、駐ブラジルベネズエラ大使と連絡をとり、チャベス大統領の反論について説明を受けるよう要請した。

 自由をめぐる議論は、3日にパナマ(Panama)で開幕する米州機構(Organization of American StatesOAS)の総会でも取り上げられる見通しだが、同総会に出席するベネズエラ代表のJorge Valero氏は2日、「OASの総会でRCTVの閉鎖をめぐる議論がなされれば、ベネズエラへの『内政干渉』とみなす」とけん制した。
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