写真は、ヒースロー空港に到着したターニー1等水兵(左、4月5日撮影)。(c)AFP/CARL DE SOUZA
【ロンドン/英国 10日 AFP】イランでの拘束から解放され帰国した英海兵らが巨額報酬でメディア取材に応じ批判をあびている件で、デズ・ブラウン(Des Browne)国防相は9日、軍関係者はメディア取材に応じて金銭報酬を得てはならないとする方針を発表した。
ブラウン国防相は、解放された英兵15人について、「当局からの明確な支持があるまで自身の体験をメディアに語ってはならない」と述べた。
国防省は原則として軍関係者へのメディア取材を禁じているが、15人については当初、「例外」としてメディアに体験談を語ることを許可していた。しかし、この措置をめぐり大論争が巻き起こったことから、同省は措置の見直しを迫られることとなった。
ブラウン国防相は、判断については「難しい決定だった」と述べ、「協議の当事者全てが満足できる結論には至らなかった。この経験を今後の参考にすべきだ」と語った。
■元拘束兵士らの取材報酬総額は25万ポンド
拘束兵の中で唯一の女性で一児の母でもあることから拘束事件の象徴的存在となったフェイ・ターニー(Faye Turney)1等水兵(26)は、9日付大衆紙サン(The Sun)や9日夕方に放映されたITVとのインタビュー報酬として10万ポンド(約2300万円)を受け取ったと報じられている。
元拘束兵士らが受け取ったとされる取材報酬の総額は25万ポンド(約5800万円)にも上るとみられる。
サン紙がターニーさんのインタビューを掲載したのに続き、ライバル紙、デーリー・ミラー(Daily Mirror)も拘束兵の中で最年少のアーサー・バチェラー(Arthur Batchelor)上等水兵(20)のインタビューを掲載した。
ブラウン国防相の発表に先立ち、第2海軍本部の Adrian Johns副武官委員は英国放送協会(BBC)に対し、「取材規定」が全軍関係者に適用されるよう再検討を行う考えであることを明らかにしていた。また、軍幹部らも各部隊にメディアとの金銭契約は禁止であることを再確認したばかりだという。
兵士らの解放に努力した海軍高官の中からも、元拘束兵らの一部が巨額報酬を得てメディアに拘束時の苦境を語っていることを「好ましくない状況」とする声も上がっている。
元拘束兵へのメディア取材の可否をめぐる論争が過熱するなか、野党議員らも、与党労働党(Labour Party)政府への批判を強めている。
ITVとのインタビューの中でターニー1等水兵は、取材の報酬として「とんでもないほどの高額を提示されたこともある」と明かす一方、「最高額を提示したメディアの取材には応じていない」と述べている。
一方、同様にイランに拘束されていたフェリックス・カーメン(Felix Carman)大尉は、自身とクリス・エア(Chris Air)大尉はメディア取材の報酬は受け取っていないという。
GMTVテレビの取材に応じたカーメン大尉は、取材報酬について自身は「不謹慎と感じる」としながら、仲間が巨額の報酬を得ていることについては「恐ろしい苦境を経験した後で、その体験から多少の報酬を得ることを否定はしない」と語った。また、ターニー1等水兵についても「報酬は彼女の幼い娘の養育費として役立つだろう」と理解を示した。
■各方面からの意見は千差万別
論争について、サン紙がセンセーショナルな記事で全盛期を誇った1980年代に同紙編集長を務めたKelvin MacKenzie氏は、BBCラジオに対し「私ならば拘束兵の暴露ストーリーよりも、このような失態を招いた政府の『無能さ』を追及する」と語った。また「奇妙なことだが、わたしならこの事件に深入りしたいとは思わない」との感想を述べている。
一方、サッチャー政権下で国防相を務めたマイケル・ヘーゼルタイン(Michael Heseltine)元副首相は、他の兵士らが僅かな給料で任務遂行に務めるなかで、元拘束兵士らだけが一財産を稼ぐなどという「あきれた話は聞いたことがない」と嫌悪感を示す。
ターニー1等水兵はサン紙とITVのインタビューの中で、英兵らを拘束したイラン兵に服を脱ぐよう強制され、「レイプ」や「処刑」の恐怖が脳裏をよぎったと告白、また、「謝罪文書」に署名した時には自分を「裏切り者」だと感じたと語っている。
バチェラー1等水兵も、同様に衣服を脱ぐよう強制され、イラン側に協力しなければ家族に会える保証はないと言われたとデーリー・ミラーに語っている。
この取材に対してバチェラー1等水兵が報酬を受け取ったかどうかは明らかになっていない。
15人は3月23日、国連(UN)の密輸防止対策の一環としてペルシャ湾で船舶検査を行っていたところを、イラン当局に拘束された。英国側は、兵士らの活動はイラク領海内だったとするが、イラン側はイラン領海内だったと主張している。15人は、4日に解放され同日英国に帰還した。
同日、イラクでは道路脇爆弾で駐留英兵4人が死亡している。この事件で娘のEleanor Dlugoszさん(19)を失ったSally Veckさんは、タイムズ(The Times)紙の取材に対し、メディアに体験談を「売る」など「恥ずべき行為だ」と語った。
写真は、ヒースロー空港に到着したターニー1等水兵(左、4月5日撮影)。(c)AFP/CARL DE SOUZA