写真は同日、ヒースロー空港に到着した兵士15人の様子を放映するイランのアラビア語衛星テレビ局アルアラム(Al-Alam)の画像。(c)AFP/DSK
【テヘラン/イラン 5日 AFP】5日、イランに拘束されていた英海軍兵15人が解放され、ロンドン、ヒースロー空港へ到着した。同日、イスラム教最高指導者、アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師の外交顧問は5日、「イランは目的を達成した」と語った。また、英兵解放の前日に英国政府から謝罪の書簡を受け取ったことを明らかにした。
■アラブ諸国には、イランの力の誇示する結果に?
マハムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領は4日、解放の決定を突然下したが、これは自身を中東地域の盟主たるべく世界に印象付けようとのプロパガンダ作戦の一環ではないかとの見方が流れている。
英国では、拘束された兵士らの映像がこの2週間にイランのアラビア語放送局アルアラム(Al-Alam)で繰り返し放映されたことへの不快感が残っているものの、イースターを前にした今回の「予期せぬプレゼント」は、アフマディネジャド大統領の評判を上げるのに一役買いそうな気配も漂っている。
同大統領は今回の拘束事件で「充分に利益を得た」と語るのは、英国在住のイランの元外交官、Mehdi Varzi氏だ。
同氏はAFPに対し、イラン国民に対しては「かつての植民地大国である英国は、軍事的脅威ではない」ことを示せたと同時に、アラブ諸国に対しては、自身の信用を高めることに成功した」という。
兵士らの映像を流したのは、「米英への怒りをつのらせるアラブ諸国にアピールするため」と分析。今回の解放を「『危機を回避して、勝利を得た』と言っているようなもの」と語った。
また、イランのMansoor Farhang元国連大使は、英BBC放送に対し、「イランは、『世界から一目置かれる存在』であることを示すべく『力の誇示』に終始してきた」と述べている。
■英米との関係改善への端緒となるか
英国外務省の元高官、David Owen氏は、スカイ・ニュース(Sky News)に対し、「アフマディネジャド大統領は、英米との関係修復ならびにイラク安定化への積極的貢献を果たすべきだ」と述べる一方、「イラク側も、心機一転を望んでいるだろう」と話す。
同氏は、「イランが2003年に中東問題について、米国との直接協議を申し込んだものの、関係の改善には至らかった」と回顧。事実、1979年11月のテヘラン米大使館占拠・人質事件以来、米国のイランに対する経済制裁は継続されている。
しかしながら、イランの核問題でイランと西側諸国との亀裂が深まる現在、「今回の解放が、英米との関係改善の端緒になるのでは」との希望的観測を示した。「大統領が強硬派だということを考えれば、解放されたという事実は、英米との関係改善においては喜ばしい第一歩だ」
その一方で、英保守党のBernard Jenkin議員は、今回の解放を、「気前の良さというサプライズを示すための、計算尽くしの演出だ。ファインプレーだ」と皮肉を込めて語った。
前出のVarzi元外交官も、イランは米英両国に対し、「われわれはイラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領のような末路はたどらない」とのメッセージを送りたかったのではないかと見る。
「イランは、イラクやアフガニスタンの米軍やペルシャ湾に展開する多国籍軍の空母に『包囲されている』と感じており、西側諸国と交戦しても勝ち目はないという自覚を、同地域での存在感をアピールしたかったのではないか」とVarzi元外交官は語った。
■ささやかれる二国間の「裏取引」
今回の拘束事件の動機について、先のVarzi元外交官は「不明」とし、イラクに拘束されている複数のイラン人の身柄引き渡しという裏取引があったのではとの憶測にも疑問を呈した。
この件に関し、トニー・ブレア(Tony Blair)英首相は、いかなる取引も行っていないと主張。米国務省のトム・ケーシー(Tom Casey)副報道官も、イラクに拘束されているイラン人とは「一切無関係」と強調した。
写真は同日、ヒースロー空港に到着した兵士15人の様子を放映するイランのアラビア語衛星テレビ局アルアラム(Al-Alam)の画像。(c)AFP/DSK




