【北京/中国 5日 AFP】9月9日、中国は「文化大革命(Cultural Revolution、1966年~1976年)」の指導者、故毛沢東(Mao Zedong)国家主席の死後30年を迎える。
激しい粛清と拷問で数百万人が犠牲となった文化大革命の時代に比べ、現在の中国は建国史上かつてないほどの自由を謳歌している。
しかし専門家は、毛の影響は今日でも強いと考えている。中国社会科学院哲学科の徐友魚(Xu Youyu)教授は、 「国民の生活は、今も彼の影に覆われている」と述べる。
■毛の政治判断ミスで起きた数々の悲劇
文化大革命後の20年以上に及ぶ改革で、中国は現代的な経済大国へと変貌してきた。しかし指導層は、国家統治の手法について相変わらず毛沢東思想に頼っている。その政治体制は毛が導入した一党独裁を厳格に維持し、政治的、思想的自由が制限される全体主義国家である。体制批判を行う活動家や弁護士、ジャーナリストらが投獄されたり、言論活動の妨害は日常茶飯事だ。また、そうした不当性を、ロビー活動を通じて政府に訴えようとする者が逮捕されることも珍しくない。
「現在は毛時代より自由があるのは確かだ。しかし、それは政権に異を唱えない限りでしか保証されない」と徐教授は語る。実際、政府機関から独立した労働組合や宗教団体などの組織も一切、許されていない。しかし、毛沢東による政治判断の誤りで多くの悲劇がもたらされたにもかかわらず、彼が封建時代の貧困や外国の占領から中国を救った「偉大な指導者」とかげる中国人はいまだに多い。
1958年に開始された「大跳躍」運動では、急速な工業化政策の中、約30万人が餓死したとされる。また、現在では政府も「悲劇の10年」と認める文化大革命では、推定100万から200万人が殺害された。この数には、「走資派 (資本主義の道を歩む権力者の意)」や「反革命分子」などとして共産党から追放され、死に追い立てられた本来、忠実だった党幹部や知識人らの大多数は含まれていない。
■一党独裁維持に利用される「毛神話」
自身も政治的に微妙な問題を執筆し、7年間投獄されていたベテランのジャーナリスト、Gao Yu氏は、「指導者たちは人権を擁護する活動家や弁護士を攻撃するのに、毛沢東の階級闘争論を利用している」と語る。
毛沢東時代にノスタルジーを感じているのは、「市場志向型発展を遂げつつある国内の格差拡大で打撃を受けている層が中心」と専門家らは分析する。Yu氏は、「力を持たない人ほど文革時代を懐かしく思い、現実に抗議する手段として毛沢東を偶像化している」と語る。
また、毛沢東の「遺産」を批判することも現体制により禁じられている。国民的議論がやがて現在の体制批判につながり、体制生き残りに対する脅威となるからだ。
「毛を批判すれば、一党体制の崩壊につながりかねないからだ。指導者たちは彼の遺骸にしがみついている」(Yu氏)
改革派を指導した故趙紫陽(Zhao Ziyang)元共産党総書記の側近で、現在はカナダのビクトリア大学(University of Victoria)で政治学を教える呉国光(Wu Guoguang)教授は、「共産党一党体制の支配を正当化するために、毛沢東神話は今後も利用され続けるだろう」と語る。「毛自身、個人崇拝を好んだといわれ、死後もそのように記憶されたかったにちがいない」(呉教授)
毛の元秘書・李鋭(Li Rui)が最近出版した著書『毛沢東の功罪』には、毛は生前、中国古代の専制君主を引き合いに出し、自らのことを「秦の始皇帝とマルクスが一体化した人間」と何度も豪語していたとのエピソードが綴られている。
写真は1976年9月12日、毛主席の死を悼み参列する人々。(c)AFP/XINHUA
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