写真は9日、テヘラン(Tehran)でAFPのインタビューに答えるシリン・エバディ氏。 AFP PHOTO/ATTA KENARE
【テヘラン/イラン 14日 AFP】イランの女性人権活動家で弁護士、2003年度のノーベル平和賞受賞者でもあるシリン・エバディ(Shirin Ebadi)氏(59)は、自身が率いる人権団体「人権擁護センター(Human Rights Center)」が8月初めに政府により「非合法」と認定されたことを受け、「人権擁護運動をやめるつもりは一切ない」と語った。首都テヘラン(Tehran)の事務所でAFPのインタビューに答えたもので、「人権問題に勝利という言葉は存在しない。大切なのは人権を守り続けること。最後までこの姿勢を貫きます」と決意を新たにした。
イラン内務省は5日、同氏が率いる非政府組織(NGO)の人権擁護センターを非合法組織と認定、活動を続ければ訴追すると警告した。エバディ氏は4年前の2002年に同僚の弁護士4人とともに同センターを設立し、イランの反体制派や政治犯の支援に当たってきた。政府を「人権侵害」で非難することも頻繁にあった。エバディ氏は今回の警告にも全く動じる様子を見せず、「あらゆる法的手段を講じてでも我々の権利を守る」と断言。設立時に「法的組織」として登録した際には「違法」であるとの通達は一切なかったという。なお、今のところ 同センターの事務所閉鎖は免れており、弁護士の活動にも支障はないと語る。
エバディ氏の人権擁護への熱意は、「解決策」が遠ざかっていくような現状の中でも衰えることはない。現在担当している訴訟は5件。当局が違法とみなすデモに参加し、警察隊に殴打・拘束されたと訴えている女性グループのケースも含まれている。エバディ氏は、「いずれもまだ判決には至っていない。イランの法廷にはあまり期待をしていない」としながらも、「こうして裁判を起こすことで、きちんと法律に従っているという姿勢を見せることが大切なのだ」と語る。
1974年にイラン初の女性裁判官となったエバディ氏は、1979年の革命後に「女性は裁判官には不適当」との政府判断により失職した。その後は弁護士に転身、(女性と子どもの)人権活動に身を捧げてきた。同氏にとっては「男女の平等」が最優先課題であり、女性よりも男性に多くの権限を付与する「イスラム法」に憤りを感じるという。たとえば、「自動車にひかれた場合、女性は男性の半分の補償しかもらえない。事件の裁判の場合、女性の証言の重みは男性の証言の半分しかない」そうだ。
エバディ氏は、改革派のモハマド・ハタミ(Mohammad Khatami)政権時代(1997-2005)、学生運動を先導したかどで投獄された。当時から「活動は困難だった」が、保守派のマハムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)政権に移行後も「困難な状況に変わりはない」という。「むしろ、日常生活は以前よりも問題が多くなりつつある。たとえば、検閲が厳しくなった。本を出版するときには必ず当局の承認を求めなければならないし、メディアが触れてはならない部分も拡大した」
検閲の強化と現政権の不透明性。この2点がネックとなって、いくら政治犯の釈放に尽力したところで、その正確な人数が把握できない現状では問題の大きさもつかめないとエバディ氏はいう。「政府は黙して語らず。政治犯の家族も、怖くて何も語ってくれない」。このことは、彼女自身も、同僚の弁護士Abdolfattah Soltani氏の例で身にしみている。
Soltani氏は、核計画のスパイ容疑をかけられた2人の被告の代理人を務めた後、この7月、極秘情報を漏らした反抗分子として5年の刑を言い渡された。尋問は一切行われなかったという。
エバディ氏は自身のノーベル賞受賞について、「国際社会へのいくつもの扉が開かれた」「世界が私の言葉にもっと耳を傾けるようになるだろう」と評価しながらも、自国内では「政府がノーベル賞を無視している以上、ほとんど意味がない」と言う。それでも、「自分自身を守る手段にはなった」と語る。エバディ氏は受賞以前に2度の暗殺未遂に遭っている。「今では当局も、私が逮捕されたり暗殺されたりすれば、高い代償を払わされると認識している」
受賞後に勝ち取った1つの「勝利」として、親権法の改正がある。これにより、離婚後、7歳未満の子どもについて母親も親権を得られるようになり、また、7歳以上の子どもについても、子どもの利益を第一に考えて状況を見て裁判所が親権者を決められるようになった。
「イランに変革をもたらすことができると今も信じていますか?」との問いに、「楽観主義者」を自称するエバディ氏は意外そうな顔を見せた。「その質問は、レース中の長距離ランナーに『途中でレースをあきらめますか?』と訊くようなものですよ」
写真は9日、テヘラン(Tehran)でAFPのインタビューに答えるシリン・エバディ氏。 AFP PHOTO/ATTA KENARE