【6月25日 AFP】米誌タイム(Time)の最新号で、ミャンマーで続く仏教徒とイスラム教徒との対立の扇動者として仏教の高僧を特集した記事に、ミャンマーから反発の声が上がっている──。

 タイム誌は7月号で、反イスラム的な言動で物議を醸し、一連の宗教抗争に関して捜査の対象となっている、中部マンダレー(Mandalay)の僧侶、ウィラトゥ(Wirathu)師の顔写真を「The Face of Buddhist Terror(仏教徒テロの顔)」の見出しとともに表紙に掲載し、同師に関する特集記事を組んだ。

「仏教徒」と「テロ」との言葉の組み合わせは、ミャンマーの多くの仏教徒に衝撃を与え、インターネット上で前週末に立ち上げられたタイム誌に抗議する署名サイトには24日までに4万人近くが署名した。同サイトには、仏教とは平和な信仰であり、テロリストのための宗教ではないとのメッセージも寄せられた。

 だが、ミャンマー中部で3月に起きた仏教徒とイスラム教徒との衝突では、暴動に加わる僧侶姿の人々が目撃されている。この時の衝突では数十人が死亡したが、その多くはイスラム教徒だった。

 一部の過激思想を持つ仏教僧たちは、イスラム教徒が経営する店のボイコットを呼びかけている。こうした僧侶の1人であるウィラトゥ師は、仏教徒の女性と他宗教信者の男性との結婚を法律で禁じるよう求めている。

 一方で高僧たちは、仏教徒とイスラム教徒との宗教対立に関する報道が一方的だとして、海外メディアを非難している。

 フェイスブック(Facebook)では、「ウィラトゥ師を侮辱することは、仏教(そのもの)を侮辱することに等しい」「ウィラトゥ師は、ミャンマー人しての国民性と宗教を保護しているだけ」「この記者は、明らかにミャンマーや仏教について正しく理解していない」などと、タイム誌を批判する書き込みが見られた。

 3月に中部で起きた宗教抗争では、少なくとも44人が死亡し、数千の家屋が焼失した。また昨年に西部ラカイン(Rakhine)州で起きた仏教徒とイスラム教徒のロヒンギャ(Rohingya)人との対立では200人が死亡し、約14万人のロヒンギャ人が居住地を追われた。(c)AFP