【3月19日 AFP】エジプトのキリスト教の一派、コプト正教会(Coptic Orthodox Church)の教皇シェヌーダ3世(Shenuda III)が17日、長い闘病生活の末に死去した。88歳だった。

 コプト正教会は中東最大のキリスト教派で、エジプトの人口の約10%にあたる8000万人以上が信仰していると推計されている。シェヌーダ3世は約40年にわたって教皇を務め、イスラム過激派による攻撃から信者を守ることに努めた。

 18日にはカイロ(Cairo)のサンマルコ大聖堂(St Mark's Cathedral)で木製の玉座に据えられた遺体が公開され、教皇との最期の別れをするために大勢の信者が集まった。教会前にできた信者の列は1キロメートルに及び、軍の車両が出て警備に当たった。

 教会の発表によれば、遺体を一目見ようと殺到した信者が押し合いになり、3人が圧死したという。国営テレビは信者に対し、遺体は20日まで公開されているので無理に押しかけないようにと呼びかけている。

 国営メディアによれば、遺体は遺言に基づきナイルデルタ(Nile Delta)にあるワディ・ナトルーン(Wadi Natrun)の聖ビショイ修道院(St Bishoy Monastery)に埋葬される。シェヌーダ3世はアンワル・サダト(Anwar Sadat)政権時代、サダト元大統領のイスラム教擁護を公に批判して、この修道院に一時幽閉されていた。

 しかしシェヌーダ3世は、サダト氏暗殺後に就任し2011年の国民蜂起で辞任したホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)前大統領は支持していた。

 教皇の死を悼む言葉が世界中から寄せられている。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、シェヌーダ3世の寛容さと他宗教との対話姿勢をたたえるメッセージを発表した。バチカン当局によれば、ローマ法王ベネディクト16世(Benedict XVI)も追悼の祈りを捧げたという。

 コプト正教会は後継者選びを始めている。(c)AFP/Samer al-Atrush