【9月17日 AFP】イスラム教の創始者ムハンマド(Mohammed)の似顔絵を書こうと呼び掛けるウェブサイトができるきっかけを作ったとして、強硬派のイスラム教指導者から脅迫された米国の風刺漫画家が、潜伏生活を強いられている。

 米ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)の新聞、シアトル・ウィークリー(Seattle Weekly)に連載している風刺漫画家、モリー・ノリス(Molly Norris)さんは4月、米国のテレビ局コメディ・セントラル(Comedy Central)が人気アニメ番組「サウス・パーク(South Park)」で、預言者ムハンマドがくまのぬいぐるみを着ている場面があった回の放送を、自主的に中止したことに抗議する漫画を描いた。

 この漫画には、5月20日を「みんなでムハンマドを描く日にしよう」という言葉が含まれていた。すると米SNSフェースブック(Facebook)上にすぐに、同名のサイトが立ち上がった。
 
 しかし、モリスさんは自分のウェブサイト上で「わたしはムハンマドを描く日を宣言したわけではなく」、フェースブックのサイトとは無関係だと述べた。また、メッセージは風刺的なものだったのに、他人に真面目に受け取られ、利用されてしまったと弁明した。

 これにも関わらず、米国生まれのイエメン人である強硬派のイスラム教指導者アンワル・アウラキ(Anwar al-Awlaki)師がノリスさんの暗殺を呼び掛けた。また7月には国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の英語誌がアラウキ師の言葉に従い、ノリスさんは攻撃対象に値すると宣言したため、ノリスさんは潜伏を強いられることになった。

 シアトル・ウィークリーは15日、「モリー・ノリスの漫画が今週は掲載されていないことに気付いた読者もいるだろう。それは、モリーはもはや存在しないからだ」という告知を発表した。

 同紙によるとモリーさんは「幸い命に別状はないが、米連邦捜査局(FBI)から強力に助言され、『幽霊になった』。つまり居場所を変え、偽名を使い、基本的に身元を抹消した」という。政府が資金を出しているのではないという点以外は、裁判の際の証人保護プラグラム下に置かれているのと同じ状態だと、同紙は説明している。(c)AFP