【2月4日 AFP】エジプト政府とイスラム教スンニ派の指導者らが、学校での女子のニカブ(目の部分だけが開いた黒いベール)着用を禁止しようと手を尽くすなか、カイロ大学(Cairo University)には、これを無視してニカブをかぶる女子学生の姿が目立つ。

 目の部分にスリットが入ったニカブで顔をすっぽり覆っている法学部学生のマルワさん(19)は、「街を歩いている時や交通機関で、セクシュアルハラスメントに遭わないよう着用しています」と答えた。

 しかし、セクハラがなくなったらニカブを脱ぐのかと質問すると、「とんでもない。ベールはわたしに尊厳を与えてくれるもの。それに男たちが仕事も住まいも容易に見つけられない現状では、かれらのフラストレーションは消えず、セクハラもなくなりません」とピシャリ。

 エジプトでは、イスラム女性の大半がニカブなど髪や首を覆うスカーフの「ヒジャブ」を着用しており、ヒジャブの着用は宗教的義務だという見解を示す宗教指導者もいる。

 だが、イスラム教スンニ派の最高学府であるアズハル大学(Al-Azhar University)のムハンマド・タンタウィ(Mohammed Tantawi)総長が昨年10月、「ニカブは伝統にすぎず、宗教との関連性はない」と発言し、学校でのニカブ着用を禁止する宗教令を示したことから、激しい論争が巻き起こった。

 これに対し、1月27日には国内の裁判所が、着用禁止への反対論に屈する形で宗教令を延期する命令を出した。

 政府とアズハル大学は、ニカブはサウジアラビアとイエメンの一部で実践されている超保守的なサラフィー主義(Salafi)にもつながると懸念を募らせている。ニカブは顔をすっかり隠すため、治安面から禁止すべきだとの意見もある。

 また、ニカブで顔を隠せば、別人が本人になりかわって学校の試験を受けることもできる。一部の大学は、男子学生がニカブを着用して女子寮に忍び込もうとした事件もある。

 一方で、エジプトではセクハラが横行しているというのも事実だ。「エジプト女性の権利センター(Egyptian Centre for Women's Rights)」の2008年の調査によると、セクハラを受けたことがあると答えた女性は83%にも上っている。

 カイロ大学のある女子学生は「政府は、米国人や外国人のまねをさせるためにニカブを禁止しようとしている。エジプトがモダンで発展した国だということを印象づけるためにね」と話した。(c)AFP/Mona Salem