【8月23日 AFP】多くの中東・北アフリカ諸国で22日から断食月ラマダン(Ramadan)が始まったが、新型インフルエンザA型(H1N1)の流行や景気後退が今年のラマダンのお祭り気分に水を差している。

 伝統的にラマダンの時期になるとサウジアラビアのイスラム教の聖地メッカ(Mecca)とメディナ(Medina)にイスラム教徒が殺到する。しかし今年は新型インフルエンザの流行が懸念されることから、多くのアラブ諸国政府がメッカへの巡礼を禁止した。

 サウジアラビアでは2000人以上の新型インフルエンザ感染が確認され、うち16人が死亡。国内各紙には、感染予防のためのマスクで口を覆った巡礼者たちの写真が掲載されている。

 イラン政府はラマダン期間中のサウジアラビアへの巡礼を全面的に禁止したほか、サウジアラビア行きの航空便をすべてキャンセル。アラブ諸国の宗教団体はいずれも、今年のラマダンは自宅にいるよう信徒に呼びかけている。

 一方、景気後退の影響で、アラブ諸国の多くの家庭ではラマダン期間中の出費を切り詰めざるを得ない状況だ。

 ラマダンの期間中、聖地メッカとメディナでは大勢の巡礼者が訪れるおかげで商業が活況を呈するが、今年は過去数年で最悪の断食月になることを覚悟しているという。メディナでは、売り上げが例年の70%減になると予測されている。

■神聖なラマダンにも商業化の波

 ラマダンに入る直前の21日、サウジアラビアの首都リヤド(Riyadh)中のスーパーマーケットは、夜中までラマダン中の食事「イフタール(Iftar)」を購入する買い物客でごった返していた。イフタールは日没後に初めて口にする食事のこと。家族や友人たちと共に食べるため自宅の食料庫に大量に蓄えておく必要があるのだ。

 同国の衛星放送各局は、ラマダンの特別番組の放映を始めた。内容はシリーズ物のドラマ、コメディー、トークショー、映画などで、年間で最高の視聴率を獲得できるこの時期にシェア拡大を目指す。

 サウジアラビアの英字紙アラブ・ニューズ(Arab News)のコラムニストTariq al-Maeena氏は、宗教に根ざした神聖なラマダンが商業化されつつあるこうした風潮を嘆いて、次のようなコメントを寄せている。「ラマダンは内省、慈悲、忍耐、そして自己鍛錬のための月であるはずだ。だが人びとが目を向けているのはコマーシャルだらけのテレビ連続ドラマだ。その結果、信仰活動はそっちのけでテレビに釘付けになり、一晩中起きていることになっている」(c)AFP/Paul Handley