【5月19日 AFP】インフルエンザの専門家らは、6か月後に行われるイスラム教の大巡礼「ハッジ(Hajj)」で聖地メッカ(Mecca)につどう巡礼者たちの間で新型インフルエンザ「インフルエンザA(H1N1)」がまん延した場合、極めて困難な局面に入るとして、警戒している。

 フィンランドの首都ヘルシンキ(Helsinki)で18日に開幕した欧州臨床微生物感染症学会議(European Congress of Clinical Microbiology and Infectious DiseasesECCMID)では、極めて感染力が高い新型インフルエンザウイルスが、世界最大の集会とも言うべき「ハッジ」でまき散らされた場合のシナリオが発表され、専門家らを震撼させた。

 最悪のシナリオは、病原菌がメッカの高齢者、抵抗力の弱い人、病人などに容易に感染するばかりか、飛行機で母国に帰る巡礼者のそれぞれの国にも病原菌が持ち込まれ、感染がさらに拡大するというものだ。

 会議に参加したオランダ・ロッテルダム大学(University of Rotterdam)エラスムス医学センター(Erasmus Medical Centre)のアルバート・オスターハウス(Albert Osterhaus)教授らは、デマへの注意を促しつつ、ハッジの主催者らに対し、インフルエンザ対応計画を練るよう要請している。

■新型インフルエンザウイルスは今後どうなる?3つのシナリオ

 現在のところ、ウイルス株の毒性は比較的弱いとされているが、このウイルスが今後どのように姿を変えるかは大きな謎となっており、ハッジの安全を司る監視機関にとってジレンマとなっている。

 オスターハウス教授は、ウイルスの今後について3通りの説を唱えている。1つ目は、ダーウィンの法則により、季節性のウイルスに駆逐されるというもの。2つ目は、感染が拡大してパンデミック(世界的流行)となるが、死者数は比較的少ない(100-400万人程度)というもの。そして3つ目は最も脅威的で、H1N1がその他のインフルエンザウイルスと混ざって変異し、致死率も感染力も高まるというものだ。この種のものとしては、1918-19年にはやった「スペインかぜ」があり、死者は世界で5000万人に達している。

 前年12月のハッジでは、世界中から推定250万人の巡礼者が聖地を訪れ、3日間にわたる儀式に参加した。今年のハッジは11月25-28日に行われる。(c)AFP/Richard Ingham