【7月25日 AFP】南アフリカ・ヨハネスブルク(Johannesburg)のDaveytonタウンシップ(旧黒人居住区)の教会。ベージュのスーツを着た1人の男性がこぶしを突き上げ跳びはねながら、「神を褒めたたえよう」と完ぺきな音程で歌い上げる。30人のコーラス隊がこれに唱和。集まった数千人の信者は、彼の歌声に合わせて身体を揺らし、空を指さし、高らかに神を賛美する。

 この教会「Oasis of Life Family Church」で歌うゾラニ・シソレ(Xolani Sithole)さん(34)のように、南アフリカ各地の教会では才能に恵まれたゴスペル歌手が見られる。

 ゴスペル音楽は、同国では最も売れる音楽ジャンルの1つとなっているため、ゴスペル歌手にプロとしてキャリアを築くチャンスが転がりこんでくることもある。

 ただし、レコード会社にスカウトされた場合、ゴスペル歌手は、信仰と相いれないこともあるプロの道を選ぶのか、決断を迫られることになる。

 同教会のイラク・シソレ(Isaac Sithole)牧師は、プロのゴスペル歌手の信仰は揺らいでいると見ている。「プロとしての活動は、自分を殺すことになるだろう。彼らはキリスト教徒としての生活をどのように維持すべきか分かっていない」と語り、ドラッグ、アルコール、同性愛といった誘惑を並べ立てた。

 一方で、シソレ牧師は、ゴスペル産業が活況を呈し、若い歌手にお金を稼ぐチャンスが巡ってくる現状から、自分のこうした説教に耳を傾けさせるのは困難だとも認めている。「お金を稼ぐ必要がある人を止めることはできませんから」

 実際、シソレ牧師の教会でコーラスを指揮していたTshepiso Motaungさんが、つい最近プロデビューを果たし、CDをリリースしたばかりだ。Motaungさんによると、シソレ牧師にデビューのことを告げると、牧師は祝福してくれたという。

 Motaungさんはキリスト教徒としての生活を続けると強調し、売り上げの10分の1をこの教会に献金するとも述べた。

 南アフリカでゴスペルがブームになった背景には、同国には熱心なキリスト教徒が多いということ以外にも、経済成長により労働者階級でもCDを買うゆとりができたという事実もある。ゴスペル市場の購買者の大半は、労働者階級だ。(c)AFP/M.J. Smith