【3月14日 AFP】アブダビ(Abu Dhabi)のシェイク・ザイド・モスク(Sheikh Zayed Mosque)に、アバヤ姿のムスリム女性たちに混じって大勢の欧米人たちが入っていく。このモスクは、世界第3位の大きさを誇るイスラム建築の傑作で、世界最大のペルシャ絨毯が置かれていることでも有名だ。

 アラブ首長国連邦(UAE)の建国の祖で初代大統領の故ザイド・ビン・スルタン・ナハヤン(Zayed bin Sultan al-Nahayan)アブダビ首長にちなんだこのモスクは、前年12月のイスラムの犠牲祭「イード・アル・アドハ(Eid al-Adha)」の初日にオープンしたばかり。以来、毎週数百人が訪れるが、カメラを手にした海外からの観光客も多いという。

 実際、このモスクは、サウジアラビアのメッカ(Mecca)にある世界最大のグランド・モスク(Grand Mosque)、同メディナ(Medina)にある第2位の預言者のモスク(Prophet’s Mosque)と異なり、イスラム教徒以外の入場も認めている。

 もちろん入場時の決まりはある。女性は入口で渡される「アバヤ」と呼ばれる黒衣で頭からつま先まで覆わなければならない。さらに、各所に積まれているコーランに手を触れることは厳禁だ。

 モスクは、実はまだ未完成だ。これから柵や庭、駐車場を整備する予定で、最終的な完成は2009年11月。建築プロジェクトを1998年に立ち上げた故ザイド首長は2004年11月に死去、モスクに隣接する中庭に埋葬された。モスクのパンフレットには「宗教、文明、文化の調和を重んじた故ザイド首長にささげる」とある。

 アブダビ観光局は、前月からガイドツアーを開始。イスラム教徒ではないドイツ人、フランス人、英国人、イタリア人、ロシア人、米国人、アルゼンチン人、インド人も訪れているという。 

■文化拠点を目指すアブダビ

 アブダビは、同じUAE内の観光地ドバイ(Dubai)とは一線を画して「文化の拠点」になることを目指す。砂浜やショッピングモール以外のものを期待する観光客向けに、このモスクを観光の目玉にしたい考えだ。

 イタリアの大理石だけを用いて建築されたこのモスクは、高さ107メートルの4つのミナレット(尖塔)と82のドームで構成され、4万人を収容できる。柱の本数は建物内に96本、建物外に1048本。小高い丘の上に建ち、総面積2万2000平方メートルを誇るため、遠くからでもよく眺められる。

 建設には数千人の作業員(その多くがアジア人)、モロッコ人の彫刻家らが携わった。装飾用に半貴石も使用されている。

 最大の呼び物は、一度に9000人が祈りをささげられる巨大な祈とう室にしつらえられた、世界最大と言われる6000メートル四方の手織りのペルシャ絨毯。イランの女性1200人以上が2年がかりで織ったもので、重さは45トン、価格は850万ドル(約9億円)以上という。

 その隣に設けられた2つの祈とう室(1500人収容)は女性専用で、巨大モニターで説教を見ながら祈りをささげることができる。

 世界最大のドーム(高さ75メートル、直径32.2メートル)、メインホールの巨大なドイツ製シャンデリア(高さ、直径とも10メートル、重量9トン)も見所だ。

 総工費は約5億4500万ドル(550億円)と言われる。(c)AFP/Habib Trabelsi