【3月4日 AFP】ネパールの首都カトマンズ(Kathmandu)近くの町バクタプール(Bhaktapur)では、「クマリ(Kumari、少女の生き神)」としてあがめるための少女を探している。これまでクマリを務めてきた少女Sajani Shakyaちゃん(11)が引退したからだ。

 この何百年も続くヒンズー教の伝統を取り仕切る委員会のJaya Prasad Regmi委員長は3日AFPに対し、「バクタプールの新たなクマリを探す手続きを始めた。地元住民やシャキャ(Shakya)族の人たちと話し合いをしている」と語った。

 カトマンズの谷にある3つの中世の町は、思春期前の少女をヒンズー教の女神「タレジュ(Taleju)」の化身としてあがめる慣習がある。Sajaniちゃんは9年間、バクタプールでクマリを務めてきたが、前月、儀式的に果物ベル(Bael )と結婚したことにより、その地位を退くことになった。

 Sajaniちゃんの家族は前年、Sajaniちゃんのドキュメンタリー番組のプロモーションのため渡米したことで物議を呼んでいた。伝統主義者らは一家が渡米前に許可を得なかったことを非難し、クマリは出国することでその地位を失うと主張している。

 委員会で後継者探しの責任者を務めるSajaniちゃんの父親Nhuchhe Shakyaさんは「バクタプールでは、10歳か11歳くらいで少女をシバ神(Lord Shiva)にささげられる果物のベルと結婚させる習わしがある」と語り、渡米したことでSajaniちゃんの引退時期が早まったのではないことを強調した。

 クマリの中で最も有名なのは、ネパール国王を年に1度祝福する「ロイヤルクマリ(Royal Kumari)」で、カトマンズ旧市街にある王宮に住んでいる。人権擁護団体の間では、このような慣習は少女の人権を侵害していると非難する声も上がっている。

 しかし、バクタプールではクマリは家族と一緒に住み、学校に通い、年に1度、ダサイン(Dasain)の祭りでパレードするのみ。Sajaniちゃんの父親は、Sajaniちゃんが引退後、難なく生活に順応できるとみている。「一生クマリでいるのではないことは分かっていたから、心の準備はできているはずだ。うまくやっていけると思う」と父親は語っている。(c)AFP/Sam Taylor