【9月26日 AFP】(一部訂正)同性愛者であることを公表している司祭を2003年に主教に任命し、英国国教会・聖公会の世界連合アングリカン・コミュニオン(Anglican Communion)の分裂の危機を招いた米国聖公会(Episcopal Church)は25日、分裂回避のため、同性愛者の司教への聖職授与と同性カップルの祝福を中止することに同意した。

 保守派信者らの国際的な圧力を受け入れた一方、米聖公会の指導部は、同性愛者の市民権獲得に向けた活動を継続する方針も強く示している。米聖公会トップのキャサリン・ジェファーツ・ショーリ(Katharine Jefferts Schori)首座主教は、「これらの問題は、(2009年の)総会で疑いなく再検討されるだろう」と述べた。

■信者らは賛否両論、教会分裂の瀬戸際に

 米聖公会のリベラル寄りの姿勢は、米国内の信者らを賛否両論で二分し、さらに世界7700万人を擁するアングリカン・コミュニオンに分裂の危機をもたらした。

 今回の決定は、コミュニオン所属教会の最高位である英国国教会のローワン・ウィリアムズ(Rowan Williams)カンタベリー大主教との2日間に及ぶ話し合いの末に下されたもの。世界各地の国教会派の教会指導者らは、米聖公会が同性愛者に対するリベラルな姿勢を変えない限り、同会との関係に「最善の場合でも傷がつく」と警告。回答期限を設けて、同会に決断を迫っていた。

 ショーリ首座主教は、「今回の解決策は妥協の産物で、100パーセント納得している者はもちろん誰もいない。ただ、皆が結束できる地点を見つけたと信じたい」と述べた。

■同性カップルへの祝福は個人裁量?

 コミュニオン主教会議は、「主教候補者個人の生き方に国教会派の教義と対立する部分があり、コミュニオンに緊張を生む可能性がある場合、その人物への聖職授与に同意しないという制限を設ける」との方針を再確認した。

 また、同性カップルへの祝福についても、「コミュニオン全体で広く合意が得られるまで、または総会がさらなる行動を決定するまでは、同性愛者に対する正式な祝福の儀式を教区内で行わないこと」を誓約した。

 ただ、同性カップルに非公式な祝福を与えることが許されるか否かについては不明。声明は、聖職者の立場として、「いかなる性的指向を持つ者にも愛と理解を持って応え、個人個人への宗教指導に関しては、個々の裁量で寛容に応じることに変わりはない」としている。

 マサチューセッツ(Massachusetts)州のトム・ショー(Tom Shaw)主教は、米国内での同性愛カップルの結婚への祝福は依然、続くだろうと述べる。「米国で唯一結婚の平等が認められている州の主教として、個人的に指導的立場から同性愛者に祝福を授ける行為は理解できるとの大主教の声明は、同性愛の兄弟姉妹たちのためにも喜ばしい」

■同性愛司教や女性主教に保守派は猛反発

 米聖公会は2003年、ゲイを公表しているジーン・ロビンソン(Gene Robinson)司祭をニューハンプシャー(New Hampshire)教区主教に任命。以来、アングリカン・コミュニオンは、アフリカを中心とする保守派の反発で分裂状態にある。

 また、2006年にショーリ主教が女性として初めて米国聖公会の首座主教に就任したことで、コミュニオン内の緊張にはさらに拍車がかかっていた。(c)AFP/Russell McCulley