【7月27日 AFP】英国西部ウェールズ(Wales)地方で、牛結核に感染したヒンズー教の聖牛「シャンボ(Shambo)」の処分をめぐり、ヒンズー教寺院とウェールズ当局の間で訴訟となった問題で、26日、シャンボの殺処分が執行された。シャンボについては、英控訴院が殺処分を支持する判断を下していた。

 ウェールズ議会は、牛結核にかかった牛の処分を定めたウェールズ政府の条例に基づいて、シャンボの殺処分を求めていた。同議会の広報官が27日発表したところによると、シャンボは26日夜、致死量の薬物注射を受け死亡した。
 
 殺処分のためにシャンボを連れ去ろうとした衛生当局の職員らに対し、シャンボが暮らす町カーマーゼン(Carmarthen)のヒンズー教寺院には、26日早朝からヒンズー教の僧侶や教徒ら100人が、処分を阻止しようと英国内外から集結。祈りの言葉を唱えながら寺院の門を閉め、地区に通じる道路に車両を駐車して、衛生当局の職員の通行を妨害した。

 抗議活動の参加者を警官隊が突破し、最終的に衛生職員がシャンボを連れ去ると、支援者からは悲しみの声があがった。また、寺院の僧侶らは、シャンボの殺処分は同寺院への「冒涜(ぼうとく)」だと抗議した。

 この問題は、4月にシャンボが牛結核テストで陽性と判断されたことから始まった。ウェールズ政府は衛生条例に基づき殺処分を求めたが、現地在住のヒンズー教徒らが、処分は「ヒンズー教徒の権利を著しく侵害する」と異議を唱え、殺処分以外の措置をとるようカーディフ(Cardiff)高等法院に訴えていた。

 加えてウェールズのヒンズー教団体がシャンボの姿をカメラで撮影し、ウェブサイトで延命嘆願の署名を募ったところ、世界各国の2万人以上から署名が集まった。

 訴えを受けたカーディフ高等法院は17日、殺処分の決定を破棄する判決を下したが、議会側がこれを不服として英国控訴院に上訴。同控訴院は23日、殺処分を支持する判断を下し、処分が実施された。(c)AFP