【バンガロール/インド 6日 AFP】南部バンガロール(Bangalore)市内の大学で、キリスト教の伝道師Aldrin Bogi師が思春期の女性たちに対し、婚前性交渉の危険性について熱心な講義を行った。

 「結婚前の性交渉にはさまざまな合併症など危険がついてまわり、最悪の場合には死に至る病にかかることもあります。あなたが女性であればなおさら、婚前交渉にはノーと言うべきです」。

 約1時間の講義後、結婚するまで性交渉を行わないと誓う文書にマウント・カーメル・カレッジの女子学生約100人がサインした。

 Bogi師が所属する「モアラブ(Morelove)」と呼ばれるキリスト教組織は、3人の伝道師が設立したもので、若いIT関連技術者35万人が居住するハイテク都市バンガロールで、貞操を守ろうと呼びかける運動を展開している。

 AFPの取材に答えた「モアラブ」の創始者のひとりDominic Dixon師は、「多くの若者がみさかいのない性的行為を行っているが、みんなそのことの深刻さを理解していないと思う。エイズ(AIDS)のような致命的な病気に対抗するために、婚前の性行為を抑止するための啓蒙活動を考えついた」という。

 「エイズなど性病を予防するひとつの方法は、結婚前のセックスを控え、またセックスを婚姻関係の間でのみにとどめることです」。

 「モアラブ」の展開する運動によって、これまで2500人の女性が婚前交渉はしないとする誓約書を書いた。

 運動は、米国のカトリック系グループらが「純潔教育」と称して展開する運動「ピュア・ラブ・アライアンス(Pure Love Alliance)」に似ている。「モアラブ」ではバンガロールの大学、学校、窓口となるセンターなどにカウンセラーを置き、望まない妊娠や性病など性行為にまつわる問題の相談をティーンエイジの少女や女性たちから受け付けている。

 「インドの若者たちはインド文化とは異なる(西洋)文化に適応しつつあります。しかし、思想を混ぜ合わせてしまうと、インド人として我々が持っている価値観が破壊されてしまいます。我々は純粋なインドのあり方として、この運動を推進したい。コールセンターに寄せられる問い合わせを見れば、若者がいかに助けを必要としているかが分かります。彼らはたくさんの金銭と自由を手にしすぎていて、しかしそれらをどう扱うか自分で判断できないのです」(Dixon師)。

 インドではテレビ番組などで性的行為が表だって表現されることはなく、「ボリウッド(Bollywood)」と呼ばれる映画産業では、キスシーンでさえ画面に登場させることはまれである。また、婚前の性交渉について公の場で議論されることもない。しかし、IT企業のコールセンターやソフトウェア産業の下請けなどを通じて西欧企業の影響が浸透しているバンガロールでは、文化面でも西欧風の習慣が広まり、公園やバーでキスをするカップルの姿も珍しくなくなっている。

 一方で「モアラブ」の相談センターに寄せられる相談の中には、「コンドームがトイレに詰まった」「トイレの外に一晩中、警備員が立っている」といった性行為とは関係のない苦情まで含まれているという。

 Bogi師が講演を行ったマウント・カーメル・カレッジの17歳の女子学生ナンシーさんは、師の話を聞いて自分の家族の価値観や、両親の助言を思い出し、婚前交渉をしない誓約書にサインしたという。「結婚は神聖なもの。性行為は結婚している場合、そして結婚の範囲の中でのみ祝福され、良いとみなされると思う。性行為は神によって計画され、起こることです」。

 ウェブサイトを通じて啓蒙活動を広める「モアラブ」は、結婚まで純潔を保つことの利点を説き、サイトにはカウンセリングのセクションをもうけている。相談者や書き込みをする読者の多くは女性だという。

 写真は、バンガロールのマウント・カーメル・カレッジで「モアラブ」のBogi師の講演後、「モアラブ」から発行された「純潔を誓う」証明カードを見せるナンシーさん(2006年11月27日撮影)。(c)AFP/Dibyangshu SARKAR