【8月10日 AFP】オランダで7月に死骸が発見され、同国では140年以上ぶりの確認となったオオカミについて、オランダ野生動物衛生センター(Dutch Wildlife Health CentreDWHC)は7日、東欧から自力で歩いてきたとの見解を発表した。

 北部の小村ルッテルヒースト(Luttelgeest)近くの道端で、メスのオオカミの死骸が発見されて以来、オランダ中がその謎に首をひねってきた。

 東欧からオランダに働きに来ている農業労働者が、オランダの人々を混乱させようと、いたずらで自分の国から運んできたものではないか、といううわさも一部であったが、科学者たちはこれを否定した。

 DWHCは各研究機関や野生動物保護団体と共同で発表した声明の中で「このオオカミは、頭部に強い衝撃を受けたことが原因で死んだもので、おそらく自動車にはねられたのだろう」と指摘している。年齢は約1歳半、健康な状態で、直前にビーバーの子どもを食べていたという。

 同国の研究機関であるナチュラリス多様性センター(Naturalis Biodiversity Centre)やアルテラ(Alterra)などは、正確な情報を得るにはさらに調査が必要だとしつつ、このオオカミはロシア国境付近の東欧から「自然の方法で」オランダ国内に入り、しばらく生存していた後に車にひかれたと推測している。

 いずれにせよ「死骸にはオランダに輸送された形跡も、冷凍された痕跡もなく、捕らわれていたことを示唆するような毛や足、爪などの摩耗もなかった」という。また同じ地域でオオカミのふんも見つかっているが、死骸のオオカミのものとは必ずしも特定できるわけではないとしている。

 アルテラの研究員ヘールト・フルート・ブラウンダーリンク(Geert Groot Bruinderink)氏は、国営放送NOSに対し「1匹見つかったのならば、もっといるということだ」と語り、オランダ国内に複数のオオカミが生息している可能性は大きいと述べた。

 現地ANP通信によると、オランダで最後にオオカミが目撃されたのは1869年だが、このときはドイツに近い南東部だったという。

 フランスやドイツ、イタリアを含む西欧では、1990年代以降の保護政策の変更の影響で、オオカミの生息数が増加している。(c)AFP