【7月17日 AFP】まもなく誕生するのが男子か女子かにかかわらず、英国が未来の君主となる「ロイヤルベビー」熱に沸く一方で、日本の皇室の運命を背負う6歳の少年は、世間の視線からもっと離れた日々を送っている。

 秋篠宮(Prince Akishino)ご夫妻の長男悠仁さま(Prince Hisahito)は、世界でも有数の古い歴史を持つ日本の皇室にこの40年間で唯一誕生した男子だ。

 しかし、大衆紙の注目を一身に浴び、常にゴシップや憶測の素材とされる英王室ウィンザー家(House of Windsor)とは異なり、日本の皇室の暮らしぶりが細かく語られることはまれだ。悠仁さまについても毎日を幸せに過ごされているとされるが、将来の天皇としての準備の様子が伝えられることはほとんどない。

 元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司(Shinji Yamashita)氏は、同年代の少年たちと違い「悠仁親王殿下が携帯でゲームするのかということになると、私のイメージでは今はしていないだろう。ただ、拝察するにのびのびと生活しているようにはみえる」と語る。

 広大な皇居での生活は制約が多く、儀式があまたあり、固く閉じられた宮中の外側からは、おぼろげにしかうかがい知れない。酔ったヘンリー王子(Prince Harry)のはしゃぎぶりやウィリアム王子(Prince William)の庶民的な雰囲気、環境保護運動にいそしむチャールズ皇太子(Prince Charles)のような姿はそこにはない。

 制度としきたりに囲まれた日々を送る日本の皇族がまれに公の場に姿を見せる機会は慎重に演出され、それを記録するのは許可を得たメディアだけで、用意されたシャッターチャンスの間にいそいそと皇族の笑顔を撮影した後、カメラはしまわれる。

 皇室が近代化した面もある。悠仁さまは皇族として初めて学習院以外の小学校に入学し、長女眞子さま(Princess Mako)は文化的多様性とリベラルな校風で知られるキリスト教系の大学に通う。また次女佳子さま(Princess Kako)は高校時代、5人組ダンスグループの一員だった。

 しかしこうした変化も内部から起こるものではないと、山下氏はいう。「皇室というのは率先して自分たちが変わっていくという存在ではない。国民に合わせていくというか、国の動性、国民の価値観、そういうものを見ながら少しずつ変わっていくところがある」

 2006年9月の悠仁さまの誕生まで、伝統を重んじる人々は皇室の未来に懸念を抱いていた。皇太子さま(Crown Prince Naruhito)のご夫妻には男子がいないことから、皇太子さまの長女愛子さま(Princess Aiko)が皇位を継承できるような皇室典範の改定を政府が検討もした。しかし、その議論は悠仁さまの誕生で大方消えた。皇位継承権は皇太子さま、秋篠宮さま、悠仁さまの順となっている。

 皇室典範の改定は英国に置き換えれば、今月誕生するウィリアム王子夫妻の子どもが男女どちらでも王位に就くことを意味する。しかし多くの伝統派同様、山下氏はそうした変化は日本では不可能だと考えている。愛子さまが天皇になったとすれば、「愛子内親王殿下のお子さんというのは女系の、要するにお母さまが天皇とつながる家系。当然お父さんのほうは一般の家庭だ。今まで分かっている千数百年の間、そういう天皇というのは一人もいない」

 この議論は、男女同権とは関係がない、別の領域のものだという山下氏はいう。「日本の天皇というのはそういうふうなものだ」 (c)AFP/Harumi OZAWA